この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。
安田
久野
すごいですよね。これでもう上司ガチャが無くなるっていう。
安田
実際、上司ガチャで辞めちゃう人って多いみたいですね。
久野
多いですけど、「部下に上司なんか選ばせたら組織が機能しなくなる」と警笛を鳴らす有識者もいて。
安田
上司がちゃんと仕事をするようになって、パワハラも無くなって、「いいことずくめだ」って言ってる有識者もいます。
久野
それでマネジメントが上手くいくのかどうか。そこが最大の疑問ですね。
安田
アメリカの大学では生徒の評価で教授がクビになったりするんです。もちろん教授が単位を出すかどうか決める権利はあるんですけど。
久野
安田
はい。生徒はお客さんだっていう意識が明確で。けど決して甘い教授の人気が高いわけではない。教え方が上手かったり、コミュニケーション上手な教授が評価される。
久野
安田
そうなんですよ。だから部下が上司を選ぶのもありなのかと思います。
久野
自分を成長させてくれる人とか、厳しいことも言ってくれる人とか、ちゃんと選べるならありでしょうね。そのバランスが大事だと思う。
安田
久野
安田
そもそも中小企業の社長って社員から評価されていますよね。社長が気に入らなかったら転職しちゃったり。
久野
安田
上司と合わなくて辞めちゃう社員もいるでしょうし。中には社員投票で管理職を決める会社もあるみたいです。
久野
安田
自分で立候補するみたいですけど。そうまでして上司になりたい人っているんですかね。
久野
部下の数だけ給与や予算が増えていくなら成立するんじゃないですか。問題はどういう上司が選ばれるかでしょうけど。
安田
いろんなタイプの上司がいて自由に選べるといいですよね。すごく厳しいけど部下の能力を引き出してくれる上司とか。厳しいことは言わないけど成長もいまいちとか。
久野
ドラクエのキャラみたいに能力が数値化されていると分かりやすいですよね。
安田
学校の先生も自分で選べるといいですね。今までは運だったから。どの先生のクラスになるかで人生も変わっちゃうし。
久野
N校の生徒がどんどん増えてオンラインが主流になれば可能ですよ。人気の先生はどんどん生徒が増えて報酬も増えていって。
安田
それってすごく健全ですよね。部下が上司を選ぶ会社も増えていくのかも。
久野
そうなったら上司の側も「この部下の面倒は見れません」と言えるスタイルにしないと。
安田
久野
お互い評価しないとおかしくなると思います。でも確かにそういう時代ですよね。野球やサッカーもどの監督に教わりたいかで選手がチームを選ぶので。
安田
プロを目指す人は厳しくても自分を伸ばしてくれる監督を選ぶんでしょうね。
久野
「成長に関しては自分でやるから放っておいてくれ」という人もいるんじゃないですか。
安田
イチローとか中田英寿みたいなタイプですよね。そういう人には上司は要らないです。
久野
会社員でも上司が要らない人っていますよ。ただそういうタイプは独立して自分で稼いじゃうでしょうけど。
安田
そもそも中小企業に上司なんて必要でしょうか。トップと現場だけの組織の方が収益性も高そう。
久野
30人くらいまでならその方が稼げるでしょうね。社長が全部指示を出して、社員は何の迷いもなくそれに従って。
安田
久野
ただ100人を超えてくると、さすがに上司が必要です。
安田
問題はどうやってその上司を選ぶかでしょうね。私は現場から上げるやり方は反対です。ご褒美的に管理職にしても機能しない人がほとんどなので。
久野
安田
もうAI上司でいいんじゃないですか。指示や管理はAIにやってもらって。
久野
本当にそうなるかもしれませんね。みんな管理職になりたがらないし。ロボットから言われてもイラつかないですもんね。
安田
精神的に不安そうな人がいたらちゃんとアラートを鳴らしてくれて。専門のドクターが面談してくれる。もう人間の上司は要らないですよ。
久野
「この人はちょっと弱めの管理でお願いします」とかカスタマイズもできて。
安田
人に合わせて微調整するなんてAIにはお手のものですよ。個人データをどんどん読み込ませればいいので。その人の特徴が最大限に活かせる仕事も考えてくれて。
久野
部下が上司を選ぶ時代の次はAI上司の時代になるかもしれませんね。
安田
管理職の膨大な人件費も削減できるし。大企業はあっという間にそうなっていきそうな気がします。
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安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。