第117回 「観光大国・日本」になるために必要なこと

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第117回 「観光大国・日本」になるために必要なこと

安田
今日は「日本の未来を考える回」にしようかと思います。今までの日本は「ものづくり大国」として発展してきたわけですが、それを今後も変わらず国家の軸にしていくのは厳しいのかなと。

鈴木
あぁ確かに。かつて世界中でヒットした日本の家電も、今はもうだいぶ厳しいですもんね。昔ながらの伝統工芸品には良いものもたくさん残っていますけど、世界のマーケットを狙えるほど規模は大きくないですし。
安田
そうそう。じゃあどうするかといえば、もう「観光大国」を目指していかざるを得ない。逆に言えば観光でなら世界で戦えると思うんですよ。もし鈴木さんが観光大臣に任命されて、「観光だけで日本のGDPの3〜4割を稼げるようにしろ」なんて言われたらどうします?

鈴木
僕が観光大臣?(笑) そうだなぁ…あ、でも観光といえば、ちょうど今「民泊」について学んでいるところなんですよ。不動産を活かす方法の1つとして。
安田
そうだったんですね! 何かいい気付きはありましたか?

鈴木
うーん、「いい気付き」なのかはわからないですが、いくら素敵な部屋を用意したところで、「その地域を訪れる理由がないところには誰も来てくれない」ということには気付きましたね(笑)。考えてみれば当たり前なんですけど。
安田
なるほど(笑)。でも逆に言えばですよ、行く理由さえあれば人は来る。じゃあむしろ行く理由を作っちゃえばいいのでは?

鈴木
つまり自分たちで観光名所を作る、と(笑)。それで言うとね、世の中の有名な観光名所でも、周辺の宿泊施設が足りてない所がけっこうあるんですよ。あるいはあまりクオリティの高い宿がないとかね。
安田
ああ、確かにそうかもしれませんね。特に海外の富裕層からすると、日本の宿はちょっとチープ過ぎるみたいですね。彼らは1泊10万円以上の宿に泊まりたいのに、1万2万みたいなところしか見つからなかったりして。

鈴木
僕ら庶民からすればそんな高額なところ…って思いますけども(笑)。でも彼らからしたら「10万もしないような安い宿に泊まれるか!」ってことなんでしょうかね(笑)。
安田
そうらしいです(笑)。じゃあ仮に観光地に素敵な宿泊施設を作るんだとして、ターゲットはやっぱり裕福層になりますかね。あるいは敢えて庶民を狙うのか。

鈴木
アッパーミドル層くらいがいいんじゃないでしょうかね。超富裕層でもなく、学生とかバックパッカーのような激安宿目当てでもないような。
安田
なるほどなるほど。1泊10万超えほどではないけど、数千円数万円でもないと。ということは鈴木さんが民泊事業をするなら、1泊5万円くらいのイメージですかね。

鈴木
1泊5万円というより、1人5万円みたいなイメージですね。というのもインバウンドの人たちって、割とグループ皆で同じ部屋を借りたがるらしいんですよ。だから3〜4人で借りれる15〜20万円くらいの宿があるといいなと。
安田
は〜、なるほど。確かに皆でワイワイ過ごしているイメージありますもんね。ただね、私は前から思ってるんですけど、仮に1週間日本を旅行するとして、全国の有名スポットや観光地を網羅しようとすると移動ばかりになっちゃうじゃないですか。

鈴木
ああ、なるほど。東京に行って大阪に行って、北海道も沖縄も、なんて工程は現実的じゃないですもんね。とんでもなく忙しい1週間になっちゃう。そうなったら宿の良さをじっくり味わうどころじゃないですね。
安田
そうそう。だからもし民泊ビジネスをやるなら、そのエリアで完結できるような新しい魅力の打ち出し方をしなければならないと思っていて。で、私考えたんですけど、「古き良き日本を体験するツアー」みたいなのはどうかなと。

鈴木
まさに僕も同じようなことを考えていましたよ! 僕が住んでいる美濃加茂市なんて、今の日本の都会が失ってしまった古き良き日本がいっぱいなので。キレイな山も川もあるし、古い建物もまだまだ残ってるし。
安田
いいですね〜。単なるアウトドアやアクティビティじゃなくて、昔ながらの里山のある村で「忍者のような生活を体験できるプラン」みたいな、日本ならではのものが打ち出せたら最高ですね。

鈴木
お〜、外国人の方たちはすごく好きそうですね(笑)。あとは酒蔵を活用するのもいいかなと思っています。日本ってどんなに小さな町でも酒蔵があるじゃないですか。そういった「知る人ぞ知る」という場所や体験に、価値があるんじゃないでしょうかね。
安田
同感です。私は日本を観光大国にするのであれば、いかに多くの観光客を「地方の小さい町」に呼び込むかが勝負だと思っていまして。

鈴木
なるほどなるほど。都心部だけに観光客が集中しているようでは、観光大国にはなれないと。
安田
仰るとおりだと思いますね。今の日本の地方都市ってどこも似たような感じになってしまっているじゃないですか。そこをどう改善していくか。「その土地にしかないもの・歴史」といったものを味わえない限り、なかなか人は来続けてはくれないですから。

鈴木
「その場所の物語」のようなものが必要だということですね。確かにヨーロッパの地方都市って、町ごとに色濃く特色がありますもんね。
安田
そうなんですよ。私の知り合いにも「あの雰囲気が好きだから」って何度もフィレンツェに行く人がいます。お酒好きな人だったらイギリスのアイルランド島フランスのシャトー巡りをしたいって思うじゃないですか。日本が観光大国になるためには、そういった「その場所にしかない唯一無二の魅力」を見出すべきなんだと思いますね。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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