第106回 スーパーマーケットが抱える「安さの呪縛」

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第106回 スーパーマーケットが抱える「安さの呪縛」

安田

今日はスーパーマーケットについてお聞きしたいなと。高級路線のスーパーもありますけど、基本的には「安いこと」を売りにしていることが多いですよね。


倉橋

そうなんですけど、同じ小売業の目線で考えると、「1円でも安く」を売りにするスーパーは本当に大変だろうなと。値下げがサービスの1つになってしまっているわけで。

安田

ああ、確かに。実際私の周りのスーパーの経営者さんは、みな本当にしんどそうです。


倉橋

しんどいと思いますよ〜。一度安さを売りにすると、それをずっと続けなきゃいけないわけで。工夫すると言っても、1円でも仕入れが安くなるように交渉したり、節電したり、家賃を下げたり、全部そのための工夫になってしまう。

安田

まぁ実際お客さん側も「スーパー=安い」って思ってますしね。だからちょっと高くしただけでSNSで炎上したりして。


倉橋

30年値上げしてこなかった業界で、急に上げようっていうのはなかなか難しいとは思うんですけどね。ただ、物価も光熱費も上がってますから、価格だけで勝負するのは限界がありますよ。

安田

そうですよねぇ。安く売るために社員の給料を下げたりしたら、今度は働く人が集まらないでしょうし。無人化しようにもお金がかかるし、どこかで破綻しますよね。このままいくと、安いだけのところは淘汰されてしまう気もします。


倉橋

それも仕方ないのかなと思いますね。赤字価格で出してるような店は、もう残れないんじゃないかな。例えば最近話題になっていたお米も、5キロで4000円を超えてくるのが自然な流れなんでしょう。

安田

そういえば以前、卵の生産者さんから相談を受けたことがあるんですけど、あれも安すぎますよね。「物価の優等生」と言われるくらい、ずっと値段が上がってないものの代表みたいになってますけど、餌代や輸送費の高騰を考えるとものすごい薄利になっているんですよ。


倉橋

そうでしょうねぇ。でもそこを変えるためにも、経営者の頭を切り替えないといけない。スーパーでも、安くするために電気代をケチって薄暗くしている店があるらしいですけど、そんなお店じゃ購買意欲が湧きませんから。いくら安くても、店に活気がないと意味がない。

安田

確かに。日本人は生活必需品にはあまりお金をかけませんけど、ちょっとした非日常感は求めてますもんね。スーパーでももそういう要素は重要な気がします。


倉橋

そうなんですよ。でもスーパーの経営者は「値段が高いから売れないんだ」と思い込んで、業者にも無理をさせて、最後にはチラシをまいて集客しようとする。でもそういうお客さんは他のチラシが出ればそっちへ行くんです。

安田

確かに確かに。「チラシに釣られる人」は値段しか見てないからリピートしないんですよね。

倉橋

ええ。だから敢えて言うなら、「値段で勝負するのは最も悪手」だと思います。むしろ鮮度やエンタメ性で勝負した方が、お客さんも楽しめるし、経営者も前向きになれるんじゃないかな。

安田

なるほどなぁ。そういう意味でも「安いけど楽しくないスーパー」は、いずれ淘汰されるということですね。一方でお惣菜も充実してて、ちょっと遠いけどワクワク感がある、そんな楽しいスーパーはまた行きたくなります。

倉橋

「安さ」ではなく、そういう「楽しさ」や「気持ちの余裕」を提供することに使命感をもってほしいですね。それこそがスーパーの役割なんだと思います。

 


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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