第81回 なぜ人間は不得意なことを繰り返すのか?

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第81回 なぜ人間は不得意なことを繰り返すのか?

安田

今日は「生き物の得意不得意」についてお話してみたいんです。動物って基本的に自分の得意なことしかしないじゃないですか。キリンは高い枝の葉を食べるし、ライオンは狩りをする。それに比べて、人間はなぜか不得意なことを繰り返してる気がして。


藤原

ははぁ、なるほど。面白いテーマですね。

安田

人と話すのが苦手なのに営業や接客をやったり、言われた通りに動くのは嫌なのに事務仕事に就いたりする。なぜなんだろうなぁと。


藤原

確かに苦手なことや嫌なことを当たり前にやってますよね。そもそも「仕事=ツライこと」と思っている節すらあるというか。

安田

そうなんですよ! それって結局、「得意なことじゃお金にならない」と思っているからですよね。そう考えてしまう気持ちもわからなくはないですけど、やっぱり生き物として不自然な気がして。


藤原

そうですよねぇ。実際得意なことで稼いでいる人は大勢いるわけで。…ともあれ、そういうのって人間以外もある程度は同じなのかもしれませんよ。

安田

えっ、ということは、動物も不得意なことをやってるということですか?


藤原

うーん、なんというか、例えば狩りの苦手なライオンがいたとしたら、そもそも生き延びられないじゃないですか。だから苦手だとしても狩りを頑張るしかないというか。

安田

ははぁ、なるほど。さらに言えば、頑張っても狩りが成功しないような個体は、自然と死んじゃうわけですもんね。結果として「狩りが得意な個体」が残ることになると。


藤原

そうですそうです。ただ人間社会だと、いろんな仕組みやサポートがあるから、特段得意なことをしていなくても生きていける。もっとも、そのぶん葛藤や苦しみが生まれてしまうのかもしれませんが。

安田

確かになぁ。現代は、生き延びること自体はある程度保証されてますもんね。そこが人間と動物ではだいぶ違うわけか。


藤原

選択肢が増えたという意味では、それは進化の恩恵だとは思いますけどね。ただ、だからといって「苦手なこと、苦痛なことをしなければ稼げない」という考えは不健康な気がします。

安田

私もそう思うんです。例えば今でも、勉強が苦手な子でも、いやむしろ苦手だからと毎日塾に通わせたりするわけじゃないですか。それって本当に正しいのかなあと。


藤原

そうですよねぇ。まあ親としては「勉強していい学校に行けば、いい会社に入れて人生安泰だ」と思ってしまうんでしょう。

安田

まぁねぇ。でも現実的に考えても、もうそんなシンプルな世界じゃないじゃないですか。いい会社に入ったからといって死ぬまでハッピーというわけでもない。それにね、そういう親の感覚が子どもの可能性を狭めているとも思うんです。


藤原

確かに確かに。親が子どもだった頃とは世界はまったく変わっているわけで。働き方も職業もとんでもなく多様化していて、サラリーマン以外の道も無限にありますもんね。

安田

そうなんですよ。例えばYouTubeで大好きな映画の解説ばかりしていても、それがちゃんと職業として成り立つ時代なんです。社会全体でせっかく増えた選択肢を、わざわざ狭めなくてもいいだろうにと。


藤原

同感です。逆に「仕事は自由に選んでいいんだよ」「自分の得意なことでも稼げるんだよ」っていう空気を作っていけば、子どもは勝手にどんどん成長するんだと思うんですよ。

安田

本当にそうですよね。ただ敢えて言うと、日本人って「自分で決める」のが苦手な人が多いじゃないですか。「自由にどうぞ」より「これをやりなさい」の方がラクっていう人が。


藤原

ああ、確かにそうかもしれません。昔は言われたことをやれば評価されていたから、実際それで成り立ったんでしょうしね。ただ、先ほど言ったようにもう時代が全然変わっているわけで。

安田

間違いないですね。好むと好まざるに関わらず、今は「自分で選んで、得意を活かす」時代ですもんね。それがライオンにとっての「狩り」なわけで、できない個体は淘汰されていってしまう。


藤原

そうなんですよね。だからこそ僕は、組織の中で少しでも「得意なことで挑戦していい」という空気をつくりたいと思ってるんです。

安田

素晴らしい。そういう空気がある組織には、人も自然と集まりますよね。


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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