第69回 仕事は計画的に、人生は衝動的に

この対談について

地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。

第69回 仕事は計画的に、人生は衝動的に

安田

前回のホノルルに続いて、またマラソンに出場されたんですよね? 今回はオーストラリアでしたっけ。


スギタ

ええ。7月の頭にゴールドコーストマラソンに出てきました。

安田

前回は参加中に負傷して、お店の営業にも影響が出たって聞きましたけど、今回は大丈夫でした?


スギタ

いや~、それがですね、5月から犬を飼い始めたんですけど、その世話に追われて全く練習ができなくて(笑)。ケガこそなかったものの、ほぼぶっつけ本番のような状態でした。

安田

そうだったんですか(笑)。犬が一緒なら散歩がてら走ったりできそうですけどね。


スギタ

そう思いますよね。でも犬って短距離は速いんですけど、長距離はそもそも走れないらしくて。

安田

ああ、確かに。長距離走れるのは人間だけって聞いたことがあります。


スギタ

ウチはミディアムプードルなんですけど、付き合わせて走らせようとしてもすぐ息が上がっちゃって。結局トレーニング不足のまま本番を迎えて、なんとか完走したという感じです。

安田

まぁでもケガなく終えられてよかったですね。ちなみにタイムはどうだったんですか?


スギタ

前回のホノルルの6時間半からは50分くらい短縮しました。とはいえ順位は12700人中12100位なので、本当に下の方なんですけど。

安田

へぇ。それでも50分短縮はすごいじゃないですか。


スギタ

自分の中では上々の結果ではあるんですけどね。でもホノルルと違って今回は本気で走りに来てる人ばかりで。全然雰囲気が違いましたね。

安田

は〜、なるほど。そんなガチの大会に犬と散歩したくらいで出たわけですね(笑)。ところで、なんでそんなタイミングで犬を飼い始めたんですか?


スギタ

ここ一年くらい家族でずっと「犬を飼いたいね」って探してたんです。保護犬も考えていたんですけど、初心者にはハードルが高いらしく、まずは育てやすいパピーから始めようと。いろんなサイトを見たりしている中で、ついに出会ってしまって。

安田

「この子だ!」ってピンと来たわけですか。


スギタ

そうなんです。家族全員その気になってしまって(笑)。4月末に迎え入れて、5月からは完全に犬中心の生活でした。結果、練習なしのぶっつけ本番ということになっちゃって(笑)。

安田

なるほどなるほど。とはいえタイムはしっかり縮められているわけですから、立派なものですよ。

スギタ

もう最後は気合と根性で(笑)。でもあんまりこういうのはよくないなと反省しました。やっぱりちゃんと準備して臨んだ方がいいなぁと。

安田

そりゃそうだ(笑)。それにしてもスギタさんって仕事はすごく計画的なのに、それ以外は全然計画的じゃないですよね(笑)。マラソンに出場したのも、犬を飼い始めたのも、割と衝動的な感じがすると言うか。


スギタ

犬は1年考えたんですよ。娘たちからも「欲しい欲しい」と言われて、でも「1年待ってみて、それでもまだ飼いたいなら真剣に考えよう」ということで。まぁ最終的にはビビッと来てしまって衝動的に…って感じでしたけど(笑)。

安田

ほらやっぱり(笑)。実際飼ってみてどうですか?

スギタ

いや〜そりゃもう可愛いですね。でもいろいろしつけをしている最中なので、そういう意味ではすごく大変で。トイレも覚えさせないといけないし、甘噛みの癖も直さないといけないし。

安田

でもペットを飼う人からすると、それが楽しみって言いますよね。どこかでしつけしてもらって、お行儀のいい犬になって帰ってきても、なんだかしっくりこない気がします。東大生の息子を養子にするみたいな感じで(笑)。

スギタ

確かに、それはそうかもしれませんね(笑)。大変だ大変だと言いながら楽しくて仕方ないわけで。トレーナーさんにアドバイスをもらいながら、家族一丸となってトレーニングに励んでます。

安田

いや〜、楽しそうです(笑)。ともあれ、お子さんが少し大きくなってやっと手が離れたと思ったら、今度は犬の世話を始めたわけですよね。またしばらくのんびりできなくなっちゃった。

スギタ

仰る通りで(笑)。妻も毎日「大変大変」って言ってます。僕の衝動人生に突き合わせてしまって悪いなぁと思いつつ(笑)。

安田

それはかわいそうに(笑)。犬を飼い始めたということは、オーストラリアは家族とではなく1人で行ったんですか?

スギタ

ホノルルを一緒に走った人と行きました。そもそもの発端は、その方が20年前にホストファミリーとしてお世話になった方に会いに行く、という話から始まってまして。

安田

ははぁ、そうなんですね。ご家族から「私たちも連れてって!」なんて言われないんですか?

スギタ

そういえば、そんなことは全然言われなかったですね。

安田

へぇ、理解がありますねぇ。お店のスタッフの方はどうだったんですか? 「何日も店を空けられたら困ります」とか言われたりはしないんですか。

スギタ

いや、むしろ逆ですね。行くときも「頑張ってください!」と送り出してくれたり、帰ってからも「完走おめでとうございます!」なんて言われて。

安田

は〜、ご家族だけでなくスタッフさんの理解もすごいんですねぇ。

スギタ

どうなんでしょうね。むしろ「スギタがいないほうが現場はやりやすい」なんて思っているのかも(笑)。

安田

笑。ああ、そういえば前回のホノルルは12月の繁忙期だったんですよね。だから大変だったけど、忙しい時期じゃなければいなくても大丈夫だと。…でもやっぱりそうやって快く送り出してもらえるって幸せなことですよ。

 


対談している二人

スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役

1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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