第362回「人不足が変える建設業界の未来」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第361回「さよなら採用ビジネス」

 第362回「人不足が変える建設業界の未来」 


安田

建築業界の倒産がめちゃくちゃ増えているそうです。これはやっぱり人不足倒産ですか?

石塚

建設業ってものすごく会社数が多いから総数が増えちゃうんです。比率で言うとまだまだ少ないんですよ。

安田

そうなんですか。

石塚

はい。前年と比べたら確かに増えたけど、本格的に淘汰が始まるのはこれからでしょうね。

安田

それはやはり人材不足が引き金で?

石塚

おっしゃる通り。仕事はあるんだけど「人がいないから受けられない」という会社が工事受注できずに沈んでいく。

安田

この業界って省人化には向かわないんですか。

石塚

必ず現場がある仕事なので。現場にはいわゆる現場代理人と呼ばれる施工管理を置かなきゃいけないんです。

安田

人間は必須だと。

石塚

はい。日本中でインフラが老朽化して問題になってますよね。穴が開いても復旧できなくて。あれも現場の人不足が原因です。

安田

この業界ってどうなっていくんでしょう。

石塚

会社数は減るけど無くなりはしない。結局いい会社しか残れないんですよ。建設業ほど人をたくさん持っていることの価値がある業界ってなくて。

安田

人が集まる会社しか生き残れないと。

石塚

AIやロボットに切り替わる仕事もあるんですけど。完全ロボット化するにはまだまだ何十年もかかりそうな仕事がたくさんあって。

安田

たとえばどんな仕事ですか?

石塚

いちばんは現場を管理する仕事ですね。こはAIにはできない。だから人を確保できるいい会社だけが残っていく。

安田

いい会社の条件って何ですか?

石塚

業績が良くて、仕事の質が高くて、労働条件がいいこと。この3つが揃った会社ですね。

安田

そういう会社しか生き残れないと。

石塚

その通り。そこに仕事も人材も集中していくという予想です。

安田

ニュースになっていた北海道の建設会社があるじゃないですか。社員が社長に殴られたり蹴られたりした。

石塚

ああいう会社ってほんと稀です。実はこの業界ってIT業界とか営業業界に比べてもパワハラが少ないんですよ。なぜなら悪い評判がすぐ広がって人が採れなくなるから。

安田

まだあんな会社が多いのかと思っていました。

石塚

いやいや。「安田建設って酷いらしいよ」ってすぐみんなに分かるわけですよ。ぶわっと噂が広がるからパワハラなんてやってると自滅していきます。

安田

建設現場ってパワハラが普通というイメージですけど。

石塚

今の現場監督さんって怒り方も本当に紳士的なんですよ。

安田

そうなんですか?

石塚

昭和だったら監督の前を素通りしただけで怒鳴られてました。今は「石塚くん、俺お前のこと好きなんだよ、挨拶しような」って。優しく注意してくれる。

安田

ホントですか?

石塚

これ本当なんですよ。すごいホワイトじゃないとやっていけない。

安田

ホワイトな会社は人材採用には苦労していないんですか?

石塚

いや、そんなに簡単ではないです。だから僕はその橋渡しをしたいと思っていて。転職者にしても自分の給与条件を自分で交渉するって難易度高いわけですよ。

安田

確かに。

石塚

だから僕はエージェント業に徹したいんです。「これがリクエスト」ですってお伝えして。

安田

どんなリクエストが多いんですか?

石塚

30代で今いちばん多いのは「現場に出る時間を調整させてほしい」というリクエスト。幼稚園や保育園のお迎えを配偶者と代わりばんこでやっているので。

安田

なるほど。

石塚

これも自分で言えるって人少ないんですよ。なのでエージェントが事前確認してOKをもらう。「最終決定権者に確認してます」って言われれば安心じゃないですか。

安田

つまり求職者寄りのエージェントってことですね。

石塚

いえ。僕は真ん中で行こうと思ってます。いい会社はえこひいきしたいので、ちょっと年収が下がってもいい人材を送り込みたい。

安田

なぜ年収を下げる必要があるんですか?いい会社なら儲かっている気がしますけど。

石塚

どうしても建設業界って重層下請構造だから。大手ほどの人件費は払えないんですよ。

安田

なるほど。そこまで給料は払えないけど、その代わり他の条件が良くなるように交渉して。上手くマッチングしていこうということですね。

石塚

はい。社格と報酬を下げてもライフを取りたい人だけをターゲットにして。年収や社格を上げたい人は「リクルートエージェントでやってください」と。そんなスタンスです。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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