この対談について
株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。
第128回 中小企業における最適な「売上」と「経費」のバランスとは
第128回 中小企業における最適な「売上」と「経費」のバランスとは

そうですねぇ。そもそも社員のモチベーションが下がるような経費削減は絶対にダメだと思っていて。それこそ「電気は必要最低限しか点けるな」とか「飲み会の数を減らせ」とか、そういうのはやめたほうがいいと思います。

最初に目標や「こうなりたい」というビジョンを明確にして、そこに向かってやっていくことが大事だと思いますね。でも昔はとにかく「売上10億を目指すんだ!」なんて言ってませんでした? 「なんで10億?」って聞かれても「なんかキリがいいから」しか答えられない(笑)。

あぁ確かに。ひと昔前なら、社長が「売上10億・社員100人にするぞ」といえば社員も「わかりました!」と言って、疑問を持つ人はほとんどいなかった。でも今は「なぜその目標を立てているのか」という理由が明確じゃないと、社員は納得してついてきてくれないですよね。

そうそう。結局のところ、中小企業にとっては「社員1人あたりの収益を最大化すること」が一番大事なんだと思いますね。というのも、実は僕が「会社が大きくなるほど利益率が下がっていく」っていう失敗を経験してるので(笑)。

うーん…難しいですよね。人件費を「コスト」だと考えるといい人材は集まらないし、どんどん辞めていってしまう。でも本音は「この人材にこれだけの給料を払うのはちょっと…」と思ってしまうこともある(笑)。

わかります(笑)。そういう意味でも私は「とりあえず人を採用しよう」という考えはやめるべきだと思っていて。無駄な人の雇用=無駄な人件費が増えることになるじゃないですか。だからそれをやめれば、残っている人が確実に収益が上がるんじゃないかなと。

そういうことです。それに働く側も、中小企業で働くのであれば「この会社じゃないとこの仕事はできない」という仕事に集中するべきだと思っていて。なんというか、中小企業ってなんでもかんでも人材を抱えすぎな気がします。

そうそう。それで社員1人が現場でやれる仕事の範囲を広げることができれば、スキルアップもしてもらえるし。それなら社員も「その会社で働く意味」に納得感がでると思いますし。これもある意味、今の時代に合った経営のやり方なのかもしれないですね。
対談している二人
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。