第90回 大谷翔平に学ぶ、「人間ランド」に染まらない生き方

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第90回 大谷翔平に学ぶ、「人間ランド」に染まらない生き方

安田

今日は以前お話した、「地球ランド」と「人間ランド」についてお話ししたいんです。


藤原

ああ、いいですね!

安田

我々人間は、自然の摂理が支配する「地球ランド」の住人であると同時に、人間社会のルールで動く「人間ランド」の住人でもあるわけですよ。でもその二つの世界を行き来しているのは人間だけなんです。


藤原

確かにそうですね。動物たちは「地球ランド」のルール、つまり食物連鎖や自然淘汰といった摂理だけで生きている。だけど人間は法律や経済、文化といった独自のルールを持つ「人間ランド」を作り上げ、その中で複雑な営みを続けていると。

安田

そうなんです。そして私たちは知らず知らず「人間ランド」のルールに強く引っ張られてしまう。そのバランスを取るために、どうすれば「地球ランド」の感覚を取り戻せるか考えたのですが、キーワードは「美しさ」ではないかと思い至りまして。


藤原

ほう、「美しさ」ですか。それは単なる見た目の話だけではなさそうですね。

安田

ええ。自然界にある調和や合理性、潔さなんかも含めた美しさというか。例えば捕食者が狩りをする姿は残酷ですけど、生きるための無駄のない動きには一種の機能美があると思うんです。


藤原

ああ、確かに。わかる気がします。

安田

一方で、「人間ランド」に近づくキーワードは「楽しさ」や「欲望」なんじゃないかと。純粋な楽しさも、過度な欲望と結びつくと、人間社会特有の歪みや醜さを生んでしまう気がして。


藤原

なるほどなるほど。「お金を稼ぎたい」とか「人からよく見られたい」とか考えすぎると、苦しくなってきますもんね。

安田

そうそう。だから最近は、何かを決断するときに「この行動は、美しいだろうか?」と自問するようにしているんです。


藤原

それはいいですね。「美しくないな」と感じる時は、「人間ランド」に入り込みすぎていると。

安田

そういうことです。要はバランスなんですよ。例えば大谷翔平選手なんかは、すごく「美しい」じゃないですか。立ち居振る舞いを見ていても、人間社会に属してないんじゃないのかなと思ってしまうくらい。


藤原

ああ、確かに。野球界にいたって人間社会のドロドロはあるはずなのに、全くそんなことを感じさせませんよね。持ち前の美しさで昇華してしまっているのかもしれない。

安田

本当ですね。報酬のほとんどを後払いにしてチームの強化を優先してましたけど、そんなこと常人には考えられないですよ。そしてそこに金銭的な計算が感じられないところがすごいなと。


藤原

いやぁ、すごい人ですよね。経営者だったら「後払いにすることで金利が増えるから」とか「将来が安定するから」とか絶対に考えてしまいますよ。

安田

そうそう。それを考えないからこそ、メジャーでも一目置かれてるんでしょう。投げることも打つこともできるからというだけじゃない。生き方自体が卓越してる感じがしますよね。


藤原

自分の使命をわかっているんでしょうね。野球の能力だけなら匹敵する選手はいるかもしれませんけど、あれほど抽象度の高い思考ができるアスリートは他にいないと思いますよ。

安田

そうなんですよ。ある意味、人間を超越してる気がします。その能力を野球だけに発揮していていいんだろうかという、余計な心配もしてしまうくらい(笑)。

藤原

わかります(笑)。でも野球に興味のない人にも広く知られているじゃないですか。多くの人が、大谷選手の「美しさ」の一端を感じ取っているとも言える。

安田

確かに。そう考えると、選手を引退した後にどんな役割が待っているのかが気になりますね。

藤原

それは楽しみですね。大谷翔平という一人の人間として、どう生きていくのか。

安田

他の選手だとシーズン中も毎日飲み歩いたり、記者に対する横柄な態度で人間くささを感じることもありますけど、大谷選手はそれがないですからね。本当に不思議で仕方がないんですよ。

藤原

もちろん感情や欲望はあるんでしょうけど、それが表には出てこないんですよね。

安田

ニュートラルポジションというか、「地球ランド」ポジションに戻るのがすごく上手なんでしょうね。人間社会にあまり引っ張られていない気がします。

藤原

そういう生き方を貫くことが、彼自身の満足に繋がってるんじゃないですかね。晩年になると利他的になっていく経営者の方は多いですけど、それは同時に自分のためでもある。だからただ単にストイックなわけではない気がしますね。

安田

ああ、確かに。無理している感じがしませんもんね。あの状態が心地いいんでしょう。我々も、「美しい状態」を自分の満足に繋げられたら、大谷選手に近づけるかもしれませんね。


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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