地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第78回 シャトレーゼの「成長停止宣言」が意味するもの

そういえば、シャトレーゼのニュースはご覧になりましたか? 最近、いろいろと不祥事が報じられていまして。

そういうことです。今までのように、安さを追求して人件費や取引先への支払いを切り詰める、というやり方が通用しなくなっていく。実際ユニクロなんかはすごくて、シャトレーゼと同じ大量生産ビジネスでありながら、従業員の給料を上げ、待遇も改善し続けている。

なるほどなぁ。昔は「大量生産を支えるには下請けを犠牲にするのが当たり前」みたいな風潮がありましたけど、時代は変わったんですね。今はまだ人件費の安い海外に工場を建てたりしてますけど、それもいずれ限界が来るでしょうし。

そうですね。だからこそ店舗も工場も、究極的には無人化に近づける算段をしているんでしょう。テクノロジーを活用して、100人がやっていた作業を5人でできるようにする。その分少なくなった従業員に手厚く給料を払っても、会社としては利益が出ますから。

ああ、確かに。件のシャトレーゼも、「安くて美味しい」というイメージが定着してますもんね。客層も、僕らのお店ともまた違う気がしますし。

最近の技術の進歩はすごいですからね。例えば巨大なシート状のケーキをウォーターカッターで好きな形に切り分ける技術なんかも既にありますし。先行投資は大きいですが、やろうと思えばロボットによる大量生産も可能になるでしょう。

やっぱりそうですよね。だとすれば、シャトレーゼが今「成長を止める」と言っているのは、次の成長に向けた準備期間なのかもしれない。次に舵を切るときは、全く違うビジネスモデルになっている可能性もありますよ。
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。