第18回 「お客さんのほしい物」を売る

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国13店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第18回 「お客さんのほしい物」を売る

安田

以前のお話で、「どのぐらいの量をディスプレイすれば一番売れるかは物によって違う」と仰ってましたよね。その辺りをもう少し詳しく聞きたいんですけど。


倉橋

例えば、ファミコンなどのレトロゲームを1mの幅で陳列したらよく売れた。そこで1mを2mに幅を広げたらさらに売れた。そのまま4m、8mと広げていって、16mまでいったときに逆に動きが悪くなったと。

安田

へえ。それはなぜなんでしょう。


倉橋
シンプルに言えば、8mがお客さんにとって一番「わぁ、すごいな!」って思われる物量だったということです。つまり4mじゃ足りないし、16mでは多すぎたと。
安田
なるほど。一番感動してもらえる量ということなんですね。

倉橋
ええ。感動というのは心が動くということで、心が動かないと購買には結びつかないので。
安田
万代さんのようなエンターテインメント事業だと特にそうでしょうね。

倉橋
そうなんですよ。我々の扱う商品って「ないと生きていけない」ものじゃないんですよね。だからこそ「すごい!」「懐かしい!」「欲しい!」という気持ちになってもらうことが大事で。
安田

なるほど。ちなみに1mから2mにした後、3mじゃなく4mと倍にしていくのははなぜなんですか?


倉橋

倍というのが尺度としてわかりやすいんです。売り場面積を2倍にしたら購買数も2倍になるのが基準の数で、それより多いか少ないかで見ていくわけです。

安田
ああ、なるほど。ということは売り場面積を2倍にしたら、売上も2倍どころか3倍になったりもするわけですか。

倉橋
3倍になることも全然ありますね。むしろ、そうならないと意味がないんです。売り場を2倍に広げて売上が2倍なら、それは実質増えていないわけですよ。
安田
ああ、そうか。確かにそうですよね。

倉橋
ええ。逆に言えば、爆発的な伸びがなくなったら、その手前の物量が最適だということになるわけです。まあ、増やしたり狭めたりを繰り返しながらポイントを探るわけですけど。
安田
なるほど、アコーディオンのように広げたり縮めたりするわけですね。ちなみにこのやり方は倉橋さんが自分で見つけたものなんですか?

倉橋
父から教わったマーケティング方法の一つなんです。いわば一子相伝というか(笑)。
安田
それはすごい(笑)。ところで話は変わりますが、「欠品」についてはどう思いますか? というのも、私はよく近所のコンビニやスーパーで欠品に当たるんですよ。今まで私がいつも買っていた商品が、いつも売り切れている。やがて棚からも消えてしまったり(笑)。

倉橋
仕入れをストップしたということは、売れ行きがよくなかったんでしょうね(笑)。逆に完売してしまって欠品状態になっているなら、すぐにでも仕入れるべきですけど。
安田

私の好みがニッチすぎたのかもしれません(笑)。とはいえ、「お客さんの欲しい物が売っていない」という状態はよくないですよね。


倉橋
ええ。「これを買う人が毎週火曜に来るから、少なくとも月曜までには仕入れておこう」と考えるのが普通なので。ただ、買う人が安田さんだけだったとしたら、それは厳しいかもしれない(笑)。
安田

そりゃそうですよね(笑)。でもいまふと思ったんですが、そういうニッチで人気のなかった商品が、売り場の大きさを変えた途端に売れ出す、というようなこともあるんですか?


倉橋
ああ、ありますよ。大きさや場所もそうですし、ガラスケースに入れて希少価値を演出したら急に売れるとか。
安田
えっ、ということは、高いワインがガラスケースに入れられているのは、購買意欲を掻き立てるためなんですか? 盗難にあったら困るからだと思ってました。

倉橋
盗難にあったら困るという点ではどの商品も同じですから。どちらかと言えば、お店側が高級感や特別感を出したいときに入れることが多いんじゃないかな。
安田
なるほど。聞けば聞くほど小売業って面白いですね。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に16店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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