この対談について
株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。
安田
鈴木さん、最近「転売ヤー」が世間的に大批判を浴びているの、ご存知ですか? 先日も
マクドナルドのハッピーセットのおもちゃを転売ヤーが買い占めて、欲しかった人に全く渡らなかったという問題がありました。
鈴木
ああ、ニュースで見ました。
ポケモンカード目当てに買い占めがあったんでしたっけ? …まあ僕はハッピーセットは食べないんで、全然詳しくはないですけど(笑)。そもそもあれって景品だけ買うことはできないんですか?
安田
できないんですよ。必ずハンバーガーとかナゲットとセットで販売されていて。だから「転売ヤー」の中には、ポケモンカードだけ手に入れて食べ物は捨ててしまう、って人もいたらしいです。
鈴木
そりゃいかんな。これだけ世界的にフードロスについて問題になっているのに。
安田
もちろんそういう悪質な転売ヤーはダメだと思うんですが、ちゃんとハンバーガーも食べつつ景品もゲットして転売する人については、私、別にいいんじゃないかと思っていまして。鈴木さんはどう思われますか?
鈴木
ああ、まあ、確かにね。転売自体は違法ではないですし。企業のバイヤーが海外に買い付けに行って、日本で高く売るっていうのと構造的には変わらない。
安田
そうなんですよ。客側から見ても、「大行列に並んで買うより、多少高くてもパッと変えたほうがいい」ってニーズはあるわけで。
鈴木
そうそう。高くて嫌な人は転売ヤーからは買わなきゃいいだけの話で。そう考えると実際転売ヤーを叩いているのは誰なんだろう?
安田
メディアが煽っているだけかもしれません。実際は誰も困っていないんだけど、人が集まるところは話題性が高いから、あえて「問題提起」としてテレビが取り上げているという。
鈴木
そうかもしれません。だって本当に転売ヤーを排除したいなら、例えばマクドナルドもこんなコラボをしなければいいでしょう(笑)。これが転売対象になることはわかっていたんじゃないかなぁ。
安田
マクドナルドとしては、たとえ転売ヤーでも、ハッピーセットを買ってくれる人が多ければ多い方がいいわけで。ちなみに「チケットの転売」はどうです? これも鈴木さんとしては特に問題ない行為です?
鈴木
そうですね。
ダフ屋なんて昔からいましたし、苦労をお金で買うという意味では道理にかなっていると思います。例えば今は
大谷選手の活躍もあってドジャースのチケットが何百万円もの値段がついているらしいですけど、ちゃんと売れている。どれだけ高値でも需要があるといういい例ですよね。
安田
仰るとおりだと思います。主催者側が高く売るか、転売ヤーが高く売っているかの違いだけですから。最近は花火の特等席が有料で売られることも増えていますよね。「花火なんて、昔は無料で見れたのに」って怒っている人もいるみたいですが…。
鈴木
それだって、いい場所で花火が見たければ、朝早くから場所取りをすればいいだけの話ですよね。お金を使いたくない人は、時間で解決すればいいんですよ(笑)。
安田
私はお金で解決したい派です(笑)。ただ日本人ってちょっと僻みっぽいところがあるから、こんなことを言うと炎上しやすいんですよ。
鈴木
でも飛行機だって、ファーストクラスやビジネスクラスがあるから、エコノミーが安く乗れるわけですよね? そういう人のおかげでエコノミーに乗せてもらっていると思えば、文句なんて言えない(笑)。
安田
確かに(笑)。だから一概に「転売ヤーが悪い」というわけではなくて、彼らが買ってくれるおかげで私たちが恩恵を受けていることもあるということでしょうね。
安田
ははぁ、すごく深い言葉ですね(笑)。結局「何を優先させるか」なんですよ。お金を使いたくないなら時間を使う、時間を使いたくないならお金を使う。ただそれだけのことなのに、転売ヤーの話になるとなんで皆そんなに目くじらを立てるのか。
鈴木
本当ですね。転売ヤーにムカつくなら、その商売に乗らなければいいだけの話だということですね(笑)。
対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役
株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。
