第86回 ホットペッパー全盛時代に、美容師が客単価を上げる方法

この対談について

「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。

第86回 ホットペッパー全盛時代に、美容師が客単価を上げる方法

安田

最近、私の行きつけの美容室がついにホットペッパーに広告を出したんですって。それを聞いて、ちょっと悲しくなってしまったんですよ。そういう感覚、わかります?


岩上

あー、なんとなくわかります(笑)。要するに「集客力が落ちている」ってことですもんね。自分の気に入っているお店、人気無くなってきちゃったんだ…っていう。

安田

まさにそうなんですよ! もう15年くらい通っているお店なんですが、カットは7500円するし、日曜はお休みにしている。そういうちょっと強気なお店で、私はそういう姿勢が気に入っていたんです。それなのに…


岩上

まあ、いろいろと厳しい時代になってきてますから、美容院も生き残りに必死ですよ。もっとも、自分の行っている美容院がホットペッパーに「新規のお客様は◯%割引」なんて出していたら、モヤッとするのも当然で(笑)。

安田

仰るとおりです(笑)。ただ実際、美容業界も大変なんでしょうね。やっぱりお客さんの数が減っているってことなんですかね。


岩上

それは間違いないでしょうね。それに、数が変わらなくても来店周期が伸びていたりする。要は、美容にかける時間やお金を節約しようという人が増えちゃったわけです。

安田

となると、やっぱりお店としても新規顧客を集めるとか、客単価をあげるとか、何かしらの作戦を立てないといけない。


岩上

そうそう。そういう中で言うと「特化型」の美容室が増えているんですよ。

安田

特化型と言うと、カット専門店とかカラー専門店とか、そういうことですか。


岩上

ええ。あとは「髪質改善に強い」とか「編み込みが得意」みたいなケースもありますね。お客様が自分のニーズや悩みに合わせて美容室を選ぶ感覚ですよね。

安田

へぇ、そうなんですね。個人的にはすごく良い戦略だと思いますが、実際そういう特化型の美容院って繁盛しているんですか?


岩上

もちろんケースバイケースですが、うまくいっているお店もたくさんありますよ。特に髪質改善のお店は調子いいんじゃないかな。なんたって今ホットペッパーの検索ワード1位が「髪質改善」ですから。

安田

えっ、そんなに髪質改善をしたい人が多いんですか。


岩上

そういうことでしょうね。ただ個人的には、お客様にそう検索させてしまっていること自体がちょっと残念なんですよ。いつも担当してくれている美容師さんが、「髪が傷んできているからこんな施術はどうですか」とちゃんと提案できていたら、わざわざホットペッパーで調べないじゃないですか。

安田

確かに確かに。それができていないからこそ、こうなっているわけですもんね。でも別の視点で考えると、特化型の美容室って定着率は悪くなるんじゃないですか? 髪質改善のお店には、髪質が改善しちゃったらもう通わなくなるわけで。


岩上

それは仰るとおりなんですが、どちらかというと「特化型の美容室しか開けない」という状況になっているんですよね。美容師の教育期間がすごく短くなっていて、特定の技術しか学べない。昔はそれこそデビューするまで3年くらいの修行期間があったので、オールマイティに技術を身につけられたんですけど。

安田

は〜、なるほどなるほど。そういうことなんですね。確かにこの時代に、そこまでじっくりゆっくり育てている余裕はないか…。


岩上

ええ。仮に気合を入れてじっくり育てるお店があっても、ようやく育ってきたと思ったら、あっさり次のお店に行ったり、独立しちゃったりする(笑)。

安田

う〜む、オーナーさんはやりきれませんね(笑)。結果、特定分野だけサクッと学ばせるお店が増えてき、世の中にはますます特化型の美容院が増えていくと。ある意味では悪循環な気もします。


岩上

そうですねぇ。ただ、個人的には「問題はそこじゃないんだよなぁ」とも思っちゃうんですよ。

安田

ん? と言いますと?


岩上

どういうスタイルのお店にするか以前に、「美容に対して時間とお金をかける意識を持ってもらう」という働きかけができていますか? という話なんです。「美容について相談してもらえる信頼関係を築くことの方が先じゃないの?」っていう。

安田

ああ、なるほどなるほど。まさにそれは岩上さんが重視されている部分ですもんね。そうか、そこさえちゃんとできていれば、いろいろな問題が解決されそうです。


岩上

そうそう、根本はそこなんだと思いますよ。

安田

ちなみに私を長年担当してくれている美容師さんはもう60代過ぎの方なんですが、美容師さんも高齢になってくると、やっぱり集中力や技術力は落ちていくもんですか?


岩上

う〜ん、そうでもないんじゃないですかね。あ、でも、「集客力」は落ちがちかもしれません。新規顧客の獲得がしづらくなっていくというか。

安田

ああ、なるほど。確かに初めて切ってもらうなら若い人の方がカッコよくしてくれそうですもんね(笑)。となると、ベテランになったら既存顧客の来店頻度や単価をいかにアップさせるかが大事ですね。


岩上

仰るとおりです。ただ長年通っているお客様ほど、来店頻度や単価を上げるって難しいんですよ。対応がルーチン化してしまっているので。

安田

ああ、確かにそうでしょうね。特におじさんなんて、「月に1回美容院に行って同じだけカットして終わり」みたいな人が多い気がします。


岩上

まさにそうなんです。それでご本人が満足している場合、敢えて提案する必要もなかったりしますしね。なかなか難しいところです。

安田

なるほどなぁ。でももしかしたら客側も、聞きたいけど聞けない、聞いていいのかわからない、って部分はあるかもしれませんね。「髪や頭皮で悩んでいるけど、それは皮膚科に聞くべきかなぁ」みたいな。


岩上
そうですね。私なんかは「お客様にそういう自覚症状が出る前に、美容師さん側から状態を伝えたらいいのに」って思っちゃいます。毎月その人の髪や頭皮を見たり触ったりしているわけですから。
安田

ははぁ、素晴らしい。髪の衰えとか改善の方法は、いくらでも美容師さん側から提案することができるというわけですね。


岩上

そういうことです。そうやってお客様との信頼関係を築き上げていけば、自然と顧客定着率もアップしますし、客単価もアップしていくんだと思いますよ。


対談している二人

岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表

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美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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