【コラムvol.24】
社歴を共有せずに、
ビジョンを共有したい
という無理筋。

「ハッテンボールを、投げる。」vol.24  執筆/伊藤英紀


ある男がいる。俺の夢は。俺がやりたいことは。
俺が変革したいことは。俺が社会に与えたいものは。
未来ビジョン、変革への情熱ばかりを、語っている。
未来への思いばかりが、先走る。

ああ、彼の夢ってすてき。
もし女が、その男の未来ビジョンに魅了され、
男のこれから、を愛し、結ばれたとしたら。

私は、2人の行く末を、迷うことなくこう占う。
「2人の関係はどうもぺらぺらのようだし、
ふわふわと空虚。別れはそう遠くないかも」と。

会社と社員の関係も、この2人と同じだと思う。
いっとき未来ビジョンだけで魅了し、
モチベートできたとしても、
その蜜月は長くは続かないだろう。

社歴という過去の実体理解が不足している、
ぺらふわの幻想的関係だからだ。

人生を豊かにするのは
これからの未来ビジョンより、
これまでで培った価値観。

人生で大切なことは、
変革より、まず守ること。
そう思います。

「よさげな未来ビジョン」を語るだけなら、
小利口な人であれば誰でもできる。

その未来ビジョンがぺらぺらではなく、
本当に考えを巡らせた
厚みのある未来ビジョンかどうかを
判定する方法。

それは、ビジョンの語り手の
これまでの人生の厚みと価値観に
耳を傾け、
ビジョンが生まれた土台を探ることだ。

その変革というやつが、
単なる思いつきの浅はかな破壊ではなく、
本当に有意な前進になるのかどうかを
判定する方法。

それは、変革の語り手がこれまでの人生で、
なにを守るべきかをどう学び、
なにを継続すべきだと決心しているのか。

そこに耳を傾け、
変革してはならないもの、という信念が
その人にあるかどうかを探ることだ。

 

変革してはならないもの、
が胸に刻まれていない変革者は、
単なる「気まぐれな暴走者」である。
ハンドルを握らせてはならない。

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