日曜日には、ネーミングを掘る #016 品川新駅

ご存知の方もおられると思うが、JR東日本が、2020年春に開業する山手線・京浜東北線の田町駅~品川駅間の新駅(仮称:品川新駅)の駅名の公募を行った。

昨日(6月30日)がちょうど締め切り日であったが、日頃ネーミングを考案する立場として、どのような駅名になるか推察してみることにする。

まず、新駅の概要であるが、以下のようなものとなっている。
(写真:JR東日本プレスリリースより)

1.駅ができるのは、東海道線のJR品川車両基地だった13ha(東京ドーム約3個分)内。羽田空港や成田空港へのアクセスに優れた都営浅草線泉岳寺駅に隣接する。

2.JR東日本があえて土地を売却せず、社を挙げて街づくりにチャレンジ。「グローバル ゲートウェイ 品川」のコンセプトのもと、一帯に進める『エキマチ一体の街づくり』の中心施設であり、世界中から先進的な企業と人材を迎え入れる玄関としての役割。

3.デザインは、建築家の隈研吾氏。駅舎東西面に大きなガラス面を、コンコース階に約1000平方メートルの吹き抜けを設ける。日本の伝統的な折り紙をモチーフとした大屋根を設けるなど「和」を感じる駅づくり。

さて、ネーミングである。

スイカやエキナカはじめ、新しいことに積極的にチャレンジしているJR東日本であるが、本業の鉄道、しかも自社の代名詞のひとつともいえる山手線の駅である。それこそ百年後のことも、ほかの29駅との調和も当然考えるだろう。E電の過ちは絶対にくり返さないはずだ。そう考えると、公募とはいえ候補は案外少なく、オーソドックスな線に落ち着くのではないだろうか。私は、次の2つから決まると考えている。

A)港南駅

JR東日本にかかわらず鉄道の駅名は、地名・地域を使用したものがほとんどである。今回は、範囲を広めにとって「品川」「田町」「三田」「高輪」「芝浦」「泉岳寺」「港南」「港区」などが入る。これに「新」「東」「西」「南」「北」「上」「下」「中」などをつければ候補の数はさらに増える。しかし、いずれもJR東日本が社を上げて取り組むプロジェクトの駅名としてはなんとも弱い。そのなかで唯一あると思われるのが「港南駅」である。理由はいくつかあるが、まず新駅の住所が(じつは)港区であること。また、同区が東京23区のなかで屈指のブランド力を持ちながら、まだ表立って駅名に使われていないことも大きい。本来ならば区名をそのまま使う「港駅」が良いのであるが、これは海を連想させ過ぎなので、新駅の住所でもある「港南」となるだろう。漢字二文字は山手線のほかの駅名とも調和し、「品川―港南―田町」と並んだときのバランスも良い。ちなみに「港南駅」は北海道で貨物船駅として使用された過去があるが、これも問題にならないだろう。

B)新東京駅

概要の2に注目する。駅だけでなく街づくり、世界に向けた顔づくりであることを考えると、1つのビッグワードが浮かび上がってくる。「東京」である。皇居に近く歴史と伝統と格式がある「東京駅」の街づくりは、三菱地所が中心となって進められている。これに対して、JR東日本が「新東京駅」を中心に未来へ向けた街づくりに挑戦していく構図を形成することは十分にあり得る。TOKYOは世界的な知名度もあり、この巨大都市にもう一つの東京駅が生まれることは外国人にもわかりやすい。

駅名は、利用者の生活のみならず経済・社会・文化など広範に影響を与えるものだ。今回、JR東日本が常道をあえて踏み外し、英語の駅名やストーリー性のある駅名を選択したら、それはそれで面白い。冬の発表を楽しみに待つことにしよう。

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