泉一也の『日本人の取扱説明書』第36回「祭りの国」

泉一也の『日本人の取扱説明書』第36回「祭りの国」
著者:泉一也

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

 

とにかく日本は祭りが好きである。大晦日に北島さぶちゃんの「まつり」を日本人の半数近くが聞くぐらいである。では、1年間に日本でどのくらいの数の祭りがあるのだろうか。祭りを主催するのは神社、お寺、自治体などの地域の公的な団体である。日本の神社とお寺の数がそれぞれ約8万、自治体は1700ぐらいある。伊勢神宮では年間千以上の祭りがあるようだが、それぞれが一年に1回実施したとしても、16万回以上はあることになる。ディズニーランドといったテーマパークのパレードを含めるとこれまたすごい数になる。

では一体祭りとは何か。新年に節分にお盆に収穫祭に、祭りは季節や暦の節目にあたることが多い。節目で我々は過去から未来への切り替えをする。過去を受け入れ未来への一歩を踏み出すのだ。その切り替えで必要なのは、感情の開放と浄化である。喜びと感謝といった陽の感情を思い切り表現し、悲しみと苦しみを共感と涙で浄化するのだ。日常はこういった陰陽の感情を抑えているが、押さえ込んでいるとそのうち感情は邪気を帯び、狂気へと変質していく。そうならないように、開放と浄化の場として「祭り」がある。

とするならば、陽の感情が開放されやすいように、そして陰の感情が浄化されやすいような場づくりが必要である。まず陽の感情を大いに開放しているのは子供である。よって子供っぽさが必要である。子供が喜ぶような踊りがあり、歌があり、ゲームがあり、屋台があり、花火があり。ディズニーランドのパレードのような華やかさと楽しさに溢れた場である。大人からすると子供の狂気である。狂喜乱舞する場が祭りには必要なのだ。

そして陰が浄化されるには、悲しみと苦しみを受け入れてくれる大いなる存在を感じることである。それは、人智を超えた存在。神であり仏である。そういった大いなる存在が、我々を天から見守ってくれているという安心感、全てを知っているという安堵感を感じること。よって祭りは厳かな儀式と神聖な芸術性あふれた建物に絵や彫刻、衣装に音楽が必須となる。

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