自分のビジネスづくりは、何から始めたらいいのだろう。
全く何もない状態、まっさらな状態からビジネスをつくる。きっと、何をやってもいいのだろう。もしかしたら、なんでもできるのかもしれない。でも、だからこそ、何をやればいいのかわからない。どこから手を付けていいのかわからない。なんでもやっていいと言われたら、逆に何をすればいいのかわからなくなる。「新しいことを始めたい」。漠然とそう思うとき、まずなにをすればいいのかわからないものだ。
BFS2日目の内容は、この「なにから始めたらいいのかわからない状態」に、ひとつのヒントを与えてくれるものだった。まず始めにやること。それは「自分だけの地図づくり」である。
「やめたこと」の共通点を探る
2日目のテーマは、〈過去の決断を見える化する「わたしは何をやめたのか」〉。特に、意思を持ってやらなかったことに注目する内容だ。宿題として「意思を持ってやらないと決断したこと」を書き出してきて、当日はその内容を共有後、安田さんの質問に答えながら、なぜやらないと決めたのか、無意識に避けていることは何かを、深掘りしていく。
僕が深掘りして見つけた、無意識に避けてきたこと、それは「論理的でないこと」「理論のないこと」。別の言い方をすると「理由のないもの」だ。いくつか具体例をあげたいと思う。
・小3で漢字をやめる
僕は小学校3年生のとき、漢字の勉強を意思を持ってやめた。元々暗記が苦手なのに、覚えても覚えても、次から次に新しく現れる漢字。「もうやってられない。オレは一生ひらがなで生きる」。そう考えて、その後の小学生のあいだ、漢字は覚えないことにした。お陰で今でも漢字は苦手。
・高校で勉強をやめる
勉強とは覚えることだと思っていた。その勉強を高校に入ってからやめた。特に文系の教科(国語や社会)は勉強した記憶がない。そんな人間が大学に受かるはずもなく、浪人することになる。
・浪人時代に化学をやめる
浪人時代に物理の面白さに気づく。初めて「理由を説明する学問」に出会った。当時は物理よりも化学のほうが点数は取れたけど、化学をやめ、理科は物理一本に絞った。
・仕事で「自動設計」をなるべく使わない
僕の専門である光学の分野では、高度なシミュレーションソフトに「自動設計」という、コンピューターが自動的に設計してくれる機能がある。でもこの機能を使うと「なぜその形状になったのか」の理由が説明できない。そのため僕はなるべくこの機能を使わない。自分で計算式を組み立ててレンズやミラーの形状を設計する。結果的に自分で計算したほうが早い場合が多い。
裏側を問うから見えるもの
自分のビジネスをつくる。そう考えたとき、わざわざ自分の苦手なことをやる必要はない。当然、自分に向いていることをビジネスにしたほうがいい。しかし、実際にやるのは難しいのかもしれない。仕事だから、お金がもらえるからと、ついつい嫌でも我慢してやってしまう。みんなやっていることだから、この方法しかないからと、得意でないことを無理してやってしまう。いかにもありそうな話だ。
そうならないために、自分だけの地図をつくるのだ。自分に向いていないもの、心が動かないもの。これらに共通する部分を抽出して、言葉にしておく。この領域に自分は入ってはいけないという、立入禁止領域の境界線をはっきりと描いておく。BSF2日目のテーマ、『何をやめたのか』を深掘りすることで、自分にとって避けるべき場所が明示された地図をつくれるのだ。
得意なことを仕事にするために、まずは苦手な領域を区切っておく。この地図があるから、苦手なことや嫌いなことに直面したとき、「避けるためにはどうすればいいのか?」と自分独自の視点が生まれる。一般的に正しいと言われることや、常識に流されないための自分だけの地図なのだ。
また、自分が避けてきたことを深掘りすると、不思議と「自分のやるべきこと」が見えてくる。避けてきたこと、つまり、嫌いなことや不得意なことにスポットを当てることで、逆に、好きなことや得意なことが浮かび上がってくるのだ。この、裏側を問うことで、表側の輪郭が浮かび上がる感覚は面白い。
地図を手に
これから自分の小さなビジネスをつくっていく。安田さんは「ビジネスなんて無限にある」とよく言う。無限にある選択肢の中から、僕は何を選ぶのか。その手がかりとなるのは自分だけの地図だ。この地図を元にどんなビジネスができるのだろう。
さて、次回は3日目〈好き嫌い・得意不得意を把握する〉。ここでの気づきをまた次週、書きたいと思う。
ー 書いた人 ー
大谷 信(おおたに まこと)
大手企業でエンジニアとして勤務しながら、自分らしい働き方・生き方を模索中。ブログも連載しています。
Twitter https://twitter.com/OtaniMkt