第26回 夢のない人たちへ
【夢に日付を?】
若かりし頃に、「夢に日付を!」という言葉で元気づけられたのを覚えています。
ワタミの渡邉美樹社長がおっしゃっていた言葉です。
当時ワタミは飛ぶ鳥を落とす勢いで、急成長を遂げていました。
夢に期限を設けることで、今やらなければいけないことが明確化する。
それに向けて、日々行動することで夢が現実化するという趣旨でした。
ただ、この言葉に元気づけられた一方で、
当時の私には夢などなかったですし、
日付を入れるべき夢を探すうちに、時間だけが過ぎていました。
【期限に追われた日々】
しかし、よく考えると、個人的な夢はなかったのですが、日付は与えられていました。
営業マン時代は月末になると目標数字に追われ、
財務担当の役員になると資金繰りや返済に追われ、
個人的には住宅ローンに追われ、
子どもたちの教育費に追われようとしています。
自分が決めたのか、他人が決めたのか、社会が決めたのか、スケジュールか目標かわかりませんが、毎日の期限設定をしながら、生きてきたことにはなります。
【期限をきめる意義】
期限を決めるというのは、価値を生みます。
「2ヶ月後に納品します。」
「今すぐ行きます。」
「毎月お支払いします。」
期限を決めると、約束した相手には心配ごとを考えなくて良い、というメリットが生じます。
それが続いていくと、周りの人に安心して相談を持ちかけられるようになります。
たくさんの期限を守ることが、周りの人への価値を提供することにつながります。
ということは、期限を決めるのは、人に安心を与えるということなのです。
もちろん、約束した以上は期限を守る努力は必要ではありますが。
【期限をきめ続ける先に】
「夢に日付を!」
に元気をもらいながら何もできなかった私が、おぼろげに見えてきたものは、日付を設定することで、周りが安心するという実感です。
普通に生活していたら、夢なんてできっこないですし、大部分の人にとっても夢は寝て見るものです。
それでいいのだと最近は考えるようになりました。
私にとっての期限を決めるというのは、周りの人に安心を与えること。
そして、その人たちと関わりを深めること。
ひいては、社会の一員として存在価値をもつことなのかなと。
それによって、私自身も安心を得ているのは、言うまでもありません。
知識や経験が、ロボットに置き換わり、私たちの知らないところでものごとが進みます。
今日やった新しい仕事が、明日には古臭い手法に変わっていて、気がつくと時間だけがたっています。
しかし、期限を決め続けることが人の役に立っていると考えると、とても楽に生きていけるようになります。
期限を決めるのは、ものごとの出口の設定をするということです。
もしかしたら、期限を決め続けることで、夢が形づくられるのかもしれません。