第22回 優秀な人材を繫ぎ止める「内的報酬」

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第22回 優秀な人材を繫ぎ止める「内的報酬」

安田

人材の流動化がどんどん進んでいく中で、「一つの会社に所属し続ける必要」がない時代になってますよね。優秀な人なんかは特に。


藤原

仰るとおりだと思います。特に外的報酬に関しては、優秀な人は組織を離れても自分で獲得できるので。

安田

そうですよね。そうなると、会社が優秀な人を採用するためには、もはや内的報酬を武器にする以外にないのかもしれない。


藤原

そうかもしれません。もちろんある程度の外的報酬が得られることは前提ですが、そこから先は内的報酬が重要になってくると思います。例えば最近は副業を認める会社も増えてきましたけど、そういう歩み寄りが必須になってくると思いますね。

安田

優秀な人に辞めないでもらうためには、絶対に必要ですよね。ただ普通に考えると、「会社員としての年収は800万だけど、副業で1億稼げる」みたいな超優秀な人の場合、さすがに会社に所属する意味がないと言うか、それほどの内的報酬を用意できるものかなぁと。


藤原

一緒に働く人が素敵だとか、珍しいスキルを学べるとか、そういうことはありそうですけどね。

安田

なるほど。とはいえ優秀であればあるほど、一つの会社で囲い込もうとするのは悪手だと思うんです。その人のやる気を削いでしまって、辞める原因になってしまう。


藤原

そうなんですよ。むしろ最大限自由にさせてあげることで、ロイヤリティが高まって残ってくれる気がします。

安田

ですよね。そもそも優秀な人は「時間」で働いてないですから。5時間働くところを10時間にしたからといって、パフォーマンスが倍になるわけじゃない。


藤原

同感です。時間で拘束するより、成果で評価した方がいいと思いますね。

安田

仰るとおりです。ちなみに「副業」を前回の国家の話に当てはめるとどうなるんでしょう。2つ目、3つ目の国に所属する「副国民」のような制度は可能でしょうかね。


藤原

ははぁ、なるほど! 2つとか3つの国のパスポートを持てるような形になるわけだ。その人の国への貢献度を知って、「ぜひうちの国民にもなってくれ」と声を掛けられたりして。

安田

おもしろい! でもさっきの話同様、国にものすごく貢献できる人ほど、一つの国で抱え込むべきじゃない。いくつもの国で活躍してもらった方が絶対にいいと思うんですよ。


藤原

そうですよね。大谷翔平選手も日本にもアメリカにも大きく貢献して、どちらの国からも愛されてますもんね。軸足がメジャーリーグに移っても、日本の野球界への貢献度が下がっているわけじゃない。

安田

そうそう。大谷選手はあまりに規格外としても、日本のサラリーマンさんたちも同じだと思うんです。つまりある程度仕事ができるようになったら、給与を上げるだけで終わりにせず、「自由度」を上げていくべきなんじゃないかと。


藤原

ああ、それはアリでしょうね。出勤しなければならない日数が減るとか、リモートワークが選べるようになるとか。

安田

そうそう。優秀な人ほど囲い込みたくなりますけど、管理しない方が会社のため、ひいては世の中全体のためになるような気がして。


藤原

「囲い込まない」という考え方がとても大事ですよね。先日もあるクリニックから、「頼りにしている非常勤医が辞めてしまうかもしれない」とご相談いただきまして。そういう場合、辞めないように引き留めるよりもすべきことがあるなと。

安田

囲い込まずに、むしろ自由にさせると。


藤原

仰るとおりです。その上で内的報酬をしっかりと与える。従業員満足度を考えた時に、辞める辞めないよりも「その人の人生が豊かになることを応援する姿勢」を経営者が持っていることが重要なんです。

安田

なるほど。優秀な人ほど「縛られると離れたくなる」わけで、要はその逆をやればいいと。


藤原

本当にその通りで。会社と働く人の間で「Win-Win」の関係を構築することが大事なんです。もっと言えば、多くの経営者は「自分だけがWin」になることを考え過ぎなんですよ。働く人にとって何がWinになるのか、しっかり考える必要がありますね。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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