人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。
第25回 未来を決めすぎないことで広がる可能性

藤原さんのメルマガが本当におもしろくて、聞いてみたいことがたくさんあるんです。

その中で「ゴールから逆算するデメリット」という話を書かれていましたよね。これ、一般的にはむしろ逆のイメージがあると思うんです。つまり「いつまでに」という区切りを決めないと結局何も成就しない、だから常にゴールから逆算しなきゃいけないんだと。

そうですね。私も「未来の方向性を決める」という意味では同意見です。ただ、そのゴールを具体的に描きすぎて、達成する内容や達成する時期まで決めてしまうと、そこまでしか辿り着けないというデメリットがあると思っていて。

仰るとおりです。たとえば「世界を代表する企業になる」というようなビジョンは持っておくべきだと思うんです。ただ、「◯月◯日までに売上◯億円を達成する」みたいなことになってくると、少し事情が変わってくる。

いや、なるほど、腑に落ちました。確かにそれは「ゴールから逆算するデメリット」と言えるかもしれませんね。一方で、具体的な目標を立てなければ、やるべきことも見えないんじゃないかとも思うんです。「いつか世界に通用する会社になるぞ」と思っているだけでは、何も変わらないでしょう?

そうそう、それじゃもったいない。実際、過去の自分が想像した通りの人生よりも、想像を超える人生の方が面白いじゃないですか。私自身、今こうして安田さんと対談をしたり商品を一緒に作ったりしていて、過去の自分からすると全くの想定外なんですけど、それが楽しくて仕方ないので(笑)。

なるほどなぁ。イチローも「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行くただ一つの道」と、毎日の行動をルーティン化して頑張ってましたね。かといって、その「とんでもないところ」を「首位打者を取る」「ヒットを何千本打つ」とか具体的に設定しているわけじゃない。

プロ野球選手になるとか、メジャーに行くとか、そういう大きな方向性みたいなことは考えていたと思うんです。でも何歳までに、どこのチームに、どういう年俸で、みたいに具体的には考えていなかった気がして。

イチローにしても大谷翔平にしても、日々成長する中で方向性をアップデートしてきたからこそ、今のようなすごい実績を出しているんだと思います。つまり、ゴールを具体的に決めすぎないことで、「過去の自分の想像を超える未来」を実現できた。

だからこそ、「中間地点を決めなかった結果、想定以下にしかならない人」の方が圧倒的に多いんじゃないかと。そういう人の場合は、ガチガチに目標を決めてその通りにやることで、ようやく想定まで辿り着けるんじゃないですか?

そう言われると、確かにそうかもしれません。「夢に日付を!」と言っているワタミの渡邉美樹さんも、それがわかっていてあえて書いたのかもしれませんね。ご本人が日付まで細かく決めた人生を送られているとは思えないので。
対談している二人
藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表
1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。