第28回 採用も結婚も「終わり」を決めるところから始まる

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第28回 採用も結婚も「終わり」を決めるところから始まる

安田

従業員満足度研究所株式会社を経営されている藤原さんなら、同じ価値観をお持ちなんじゃないかと思うんですが、「会社と社員の関係」と「夫婦の関係」は近いんじゃないかと。


藤原

ははぁ、なるほど。確かにそうですね。

安田

最近私は「新卒5年理論」を唱えているんです。つまり、新卒や20代の未経験者は「5年で卒業する前提」で雇うのがいいんじゃないかと思っていて。「次の会社で収入が増えるような教育をするから5年は頑張ってね。もちろん残りたければその後も残ってくれていいよ」という。


藤原

ああ、すごくいいですね。残る場合も自分で選んで残ってるわけで、その後も頑張ってくれそうな気がします。

安田

結婚も同じで、「お互いにいつでも離婚できる状態だけど、自分たちの意思で離婚しない」というのが理想の夫婦関係じゃないかと思うんです。だからいっそ、法的に婚姻期間を10年に設定してしまえばいいんじゃないかと。続けたい人は契約を更新すればいいですし。


藤原

なるほど〜、面白いですね。8年目9年目になってくるといろいろ考えたりするんでしょうね(笑)。

安田

そうですよ(笑)。「続けたいけどこのままじゃ終わってしまいそうだな」と思う人は頑張るだろうし、別れたい人も今のように裁判で泥沼離婚をしなくても、あと2年すれば別れられるわけで。この方がみんな今よりずっとハッピーになると思うんですけどね。


藤原

確かに。そう言われると10年じゃなくてもっと短くてもいいかもしれない(笑)。

安田

そうかもしれませんね(笑)。でもこういうと必ず「女性には不利じゃないか」という意見が出てくるんです。経済的自立という意味では、やっぱりまだまだハードルは高いですから。それなら「妻からは離婚できるけど、夫からは離婚する権利がない」というルールにしてみるとか(笑)。


藤原

なるほど。今度はすごく女性に有利になりますね(笑)。

安田

笑。それ以外にも、「40代とか50代で結婚が終わりになったら、その次の相手を見つけるのは大変なんじゃないか」っていう意見も出てきそうです。でも皆が「10年ルール」になれば、新しくマッチングできる人も増えると思うんですよね。


藤原

そうですよね。60代70代専門のマッチングアプリとかが出てくるかもしれない。

安田

いいですね〜(笑)。とにかく一旦「終わり」を設けておいた方が、結婚生活を続けるにしても「お互い納得の上で続けている」という感覚になれると思うんです。終わりが決まっていないから、「終わりたい」「終わりたくない」で揉めるわけで。


藤原

確かにそうですよね。契約書でも、1年契約だけど双方納得すればさらに1年延長されるものがありますよね。それと同じように、「もう辞めましょう」とどちらかが言い出さない限りは継続していけばいい。

安田

そうそう、そういう感じでいいと思うんです。


藤原

いやぁ、「新卒5年理論」も「結婚5年説」も非常に面白いアイデアですね。まぁ結婚の方はなかなか実現のハードルは高そうですけど(笑)、前者については、既にだいぶ流動性は高まってきていますし、実現の可能性は高い気がします。

安田

そうですね。もっとも、労働法上で会社からはクビにする権利はないので、一応区切りをつけて5年で労働条件を見直すことに合意してもらうとか。


藤原

ああ、なるほど。その上で残ってくれるなら大歓迎だし、辞めるにしても次のステップを応援できればいいと。

安田

ええ、まさに。次の会社を探す手伝いをするとか、推薦状を書くとかね。そういう前提だったら「この5年間は、会社のために一生懸命頑張ろう!」となると思うんですよ。


藤原

今どき終身雇用を前提に就職する人なんて、限りなくゼロに近いでしょうしね。

安田

そうですよね。夫婦の話に戻りますけど、今は専業主婦の方が少ないくらいで、共働きの人が増えてるじゃないですか。そういう意味では、「いつでも別れられる」という選択肢を選ぶ女性が既に増えているとも言える。


藤原

確かにそうですね。「熟年離婚」みたいな話もよく聞きますし。

安田

そうそう! 実際、男性側はこのまま続いていくと思っていたけど、ある日突然女性側から離婚を告げられた、って人がすごく多いんです。だから男性側は「いかに愛想を尽かされないようにするか」を本気で考えないといけない。


藤原

なるほど。なんだかんだ最後まで連れ添ってくれる時代は終わったと(笑)。

安田

そうなんですよ(笑)。


藤原

でも真面目な話、奥様の方も人生の貴重な時間を旦那に投じてくれているわけで、旦那も当然、相応のリターンを返していかなければいけない。そうしなければある日突然愛想を尽かされるかもしれないよと。これは会社も同じですよね。

安田

本当にそう思います。人を雇うにしても、結婚するにしても、「基本的には終わりがある」ということを前提に考えないといけないんですよ。


藤原

「1回採用したらずっと働いてくれるだろう」とか、「結婚したら一生添い遂げてくれるんだろう」とか、勝手に思っちゃうのはよくない。

安田

そうそう。それが不幸のはじまりで(笑)。「終わり」を意識するからこそ、お互いハッピーでいられる気がしますね。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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