人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。
第31回 経営者の上手なお金の使い方

そこですよね。社長さん自身もそうだし、社員に対しても、「この投資をしたとして今月いくら儲かるんだ」と、あまりにも短いスパンでのリターンを求めるじゃないですか。お金の使い方が下手な人って、そういう「短期的な視点」の人が多いんじゃないかなと。

仰るとおりだと思います。さらに言うと、そういう人って「損をしたくない」っていう気持ちがすごく強い。確実に利益が出そうなものにしかお金を使わないので、結果的に手に入るリターンも小さくなってしまう。

そうなんです。だから本当に儲けたければ、「同業他社が1円も使わないもの」とかにお金をかけることが大事で。同業他社が1000万円かけたからうちは1200万円かけるぞ、という人もたまにいるんですけど、それでは大きな差は出ないわけですよ。

そうそう。一方で、「他社が1円もかけてないもの」って全く効果が出ない可能性もある反面、確変してものすごく跳ねる可能性があるわけです。それこそ数十万の投資で、何千万、何億ってリターンになるかもしれない。

松下幸之助さんの講演を聞いて、実際にその通りにやったのが京セラの稲盛さんだけだった、という話は有名ですよね。

でも冷静に考えれば、「確実に儲かります」っていうものほど怪しいはずじゃないですか。そんなものが本当にあったら人に教えずに自分でやるわけで(笑)。「こうやったら売れる」という本を買って、その通りにやったのに売れなかったという営業マンも似たようなことをしていると思いますね。

そう考えると、「答えが書いてあるもの」はほとんど役に立たないですよね。きっと皆、それを経験として知っているはずなのに、やっぱり答えを求めてしまう。抽象的な話を聞いた時に、自分ごとに置き換えて具体化できる人かどうかが分かれ目のような気がします。

ああ、確かにそうですね。そして逆に抽象化能力の高さも必要ですよね。たとえ答えを聞いたとしても、なぜその答えに行き着いたのかということを抽象化して、さらに自分の場合はどうかと具体化する。具体化能力がある人は多いんですけど、抽象化能力は決定的にかけている。
対談している二人
藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表
1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。