第32回 学校教育のレールから降りて見えたもの

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第32回 学校教育のレールから降りて見えたもの

安田

前回、「抽象化する能力」が欠けている人が多いというお話がありましたね。そしてそれは学校教育に起因してるんじゃないかと。


藤原

それはあるでしょうね。学校教育で「そもそも」という根源的なことを考えさせてくれる時間ってほとんどないですもんね。

安田

むしろテストで「そもそも」を答えると、点数を引かれたりしますから(笑)。教わっていないやり方を自分で編み出す子がいると、先生が叱ったりするんですって。


藤原

まさに抽象化の芽を積んでいく教育ですよね。

安田

いや本当に。とはいえ、経営者の中にはそういう教育の線路から外れた人が一定数いますよね。私はたまたま、学校の勉強についていけなくて仕方なく線路を外れちゃいましたけど。


藤原

三木谷さんみたいにすごく頭のいい大学を出てエリートの会社に入って独立して、っていう人も当然いますけど、学歴はないけど素晴らしく成功されている経営者さんも多いですもんね。

安田

そうそう。むしろそういう人の方が多かったりしますからね。周りのやり方に馴染めず、自分で自分の道を切り開くしかなかったタイプと言うか。そういう人はある意味、教育から悪い影響を受けずにすんだ、ということなのかもしれない。


藤原

ああ、同感ですね。私自身もどちらかというとそちら寄りで、学校教育の悪い面を吸収せずに大人になれたタイプです。確かに今思えばすごくラッキーだったのかも(笑)。

安田

笑。もちろん、線路に乗っても降りても、どちらに進んでも成功する道はあると思うんです。徹底的にエリートになるか、完全に独自路線で行くか。でも日本人はなぜか「平均より少し上」ぐらいが好きなんですよね(笑)。


藤原

好きですよね(笑)。

安田

そうやって平均より少し上を進み続けることこそが、失敗に直結していると思うんですけどね。ちなみに藤原さんはなぜ「独自路線」で行くことができたんです?


藤原

私は中学高校と、まさに平均より少し上くらいの成績だったんです。ただそれで満足するタイプじゃなくて(笑)。突き抜けてる人には敵わないし、かといってこの敷かれたレールをそのまま進んでいくのも癪で。絶対にもっと楽しい生き方があるはずだと思ったんですよ(笑)。

安田

そうだったんですか。そこで学校教育と決別したわけですね(笑)。


藤原

そういうことです(笑)。そこから全く勉強もしなくなって、大学受験も一つもせず、「大学なんか行かなくても絶対ビッグになってやる!」みたいなことを友達に言い放って。

安田

勢いがあっていいですね(笑)。


藤原

笑。とはいえ、現実はそう甘くないわけです(笑)。就職しようにも、そもそも全員が大学に行くのが当たり前の進学校だったので、求人なんて全然来ないわけですよ。先生もどう指導していいかわからないような感じで(笑)。

安田

笑。それで結局どうしたんですか?


藤原

仕方なく専門学校を受けたんですけど、そこも見事に落ちてしまって(笑)。ただ、その不合格通知の中に「夜間部だったら入れるよ」という案内があって。

安田

へえ〜、それでその専門学校の夜間部に行ったんですか。


藤原

そうなんです。夜間部なので昼間の仕事を斡旋してもらえたんですけど、それが私の社会人生活の始まりです。

安田

なるほど〜。ちなみにその時にはもう起業しようと考えていたんですか?


藤原

まだ具体的には考えていませんでしたけど、何かしら自分ではやりたいと思ってましたね。起業というよりは「BIGになりたい」という感じで(笑)。

安田

いいですねぇ(笑)。私も藤原さんと同じで、なんとかこのレールから逃げるにはどうしたらいいんだろうと考えて。ただ、働く意欲もなかったので、とりあえずアメリカの学校に行きました(笑)。


藤原

笑。でもそこでアメリカを選んだのはすごいですよね。もともと英語が好きだったんですか?

安田

いえ、全然。英語の偏差値も35くらいで。


藤原

なんと(笑)。それなのにアメリカ行きを選んだんですか。

安田

小さいときから「自分の居場所はこの国にはないな」と感じていたんです。つまりアメリカに行きたかったわけじゃなく、日本にいたくなかっただけで。だからアメリカに行って晴れやかな気分になりました。でもしばらくするとまた居心地の悪さが戻ってきて。


藤原

ふーむ。それはまたどうして?

安田

結局、場所を変えても居心地の悪さは同じだったんですよね。だからこそ「自分の道は自分で見つけるしかない」と気づけた。それがわかっただけでも、行った価値はあったと思います。

藤原

なるほどなぁ。それは大きな気づきですよね。

安田

そうなんです。それに、アメリカって当たり前のように皆商売をしてるんですよ。大学生をやりながら自分で商売をしていたり、大学教授なのに授業が終わったら美容室を経営していたり。それを見て「稼ぐ方法って無数にあるんだな〜」と感じたわけです。

藤原

学校ではそんなこと教えてくれないですもんね。いい会社に雇用されるとか、いい資格を取るとか、そんなのばっかりで。

安田

そうそう。でも社会に出ると、「違法なこと以外だったら何をやって稼いでもいいんだな」ってわかるじゃないですか(笑)。それを早い段階で知れたのはよかったですね。

藤原

本当にそうですよね。私も起業とまではいかなくても、商売をやって生きていくということは意識していた気がします。私の父はサラリーマンを全うしたタイプなんですけど、母方の祖父が戦後にゼロから起業して建設会社を作った人で。

安田

へぇ〜、それは根っからの商売人ですね。

藤原

そうなんです。お年玉を大盤振る舞いしてくれたりして、子ども心にすごくカッコよく見えて。そこから商売人に対する憧れにつながって、学校でいい成績をとっていい企業に入らなくても「カッコいい生き方」はできるんだと理解したというか。

安田

私も「大企業に入ってサラリーマンになる」という生き方がカッコいいとは思いませんでしたね。それより自分で商売をやってる人の方がずっとカッコいい。そう考えると、身近に商売をやってる人がいるかどうかというのは大きいかもしれませんね。

藤原

確かに、周りに会社員しかいないと、稼ぐ方法って雇われるか資格取るかしかないって思っちゃいますよね。最近、うちの息子が「自分で何かやりたいから、企業に就職することを期待してるならごめん」と妻に言ってきたらしくて。

安田

素晴らしいですね。きっと藤原さんの背中を見て何か感じ取ったんでしょう。

藤原

だとしたらすごく嬉しいですけど、ちょっと照れくさいですね(笑)。

安田

他と同じような生き方を期待する親が多かったりしますけど、実は「同質化」ってビジネス的に考えると、集客でもブランディングでもすごく難しいですからね。

藤原

本当にそう思います。他と同じであることには何もメリットはないんですよね。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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