第38回 経営者が持つべき物欲とは

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第38回 経営者が持つべき物欲とは

安田

私の周りの成功している経営者さんって、50代を過ぎると物欲が薄れてくる人が多いんです。私も正直、「いい車に乗りたい」とか「大きな家に住みたい」とか「ブランド物の服や時計が欲しい」っていう気持ちはなくなってきていて。


藤原

ははぁ、なるほど。確かに若い頃とは変わってきますよね。

安田

そうそう。でも最近、たまに好きな服を買うようにしてるんです。おしゃれしたいというよりは、「同じ服ばかり着るのはどうなんだろう」という気持ちから(笑)。でも、新しい服を買うとその瞬間にはやっぱりワクワクするんですよね。


藤原

それはありますね。新しいものを手に入れると、なんだか豊かになった感じがするというか。

安田

ええ。だからワクワクする服を年間1、2着くらいは買おうと決めて。そういうことが、意外と大事なことだなと思うようになったんです。


藤原

なるほど、いいですね。…ちなみに私は今でも、年齢の割にけっこう物欲があるんですよ。

安田

へぇ、そうなんですか。欲しい物がまだまだいっぱいあると?


藤原

何でもかんでも欲しいわけではありませんけど、趣味のバイクに関わるものはあれこれ欲しくなっちゃいます。あとは洋服や靴も好きですね。

安田

ははぁ、そうなんですね。気持ちがまだ若いんじゃないですか。


藤原

どうなんでしょうね(笑)。ただ一方で、安田さんのように「物欲がなくなってきた」って仰る人を、どこか憧れの目で見ている時期もあったんですよね。

安田

へぇ(笑)。達観して見えたのかもしれませんね。そういう方が大人っぽく感じるというか。


藤原

まさにまさに。でもそれは一時期のことで、物を得ることで豊かさやワクワク感を感じたり、家族や友人が喜んでくれる姿を見れることがやっぱり嬉しくて。物欲も悪いものじゃないなと。

安田

そう思います。ただ、やっぱり限度はあると思うんです。昔は履かない靴が家に30足くらいあったり、服も迷ったら両方買って、挙句どっちも着ないとかしてまして。


藤原

ありますよね。物欲とはいうものの、「本当にこれが欲しかったのか?」と自分でもわからなくなってしまったりして。

安田

そうそう。それで「これはよくないな」と心を入れ替えて、必要のないものをガサっと捨てたんです。そうして家の中にスペースができてると、だんだんと心にもゆとりが生まれたような気がして。


藤原

おお~、それはすごい。良い変化ですね。でも今はまた「敢えて買うようにしている」というわけですか。

安田

そうなんです。買わない生活も快適だったんですけど、やはり適度なワクワクは大事だろうということで。もちろん、昔みたいにやたらめったら買うわけじゃなく、欲しいと思ってもすぐに買わずにおいたり、予算を先に決めたりして、ちょっと自分を焦らしてあげて(笑)。


藤原

笑。でもそういう制約があった方が、手に入れた時の喜びも大きいですからね。僕も昔はたくさん買って満足してましたけど、今は本当に好きなブランドのものを長く使うようになりましたね。ジーパンなんかも買ってから大事に育てたりして。

安田

ああ、ジーパン好きな人は「育てる」って言いますよね。いいものを買うと「90日間は洗濯しないでください」とか書いてあったり。


藤原

よくご存じで(笑)。使っていくうちにだんだんと風合いが変わってくるんですよ。デニム職人が手作りしたものを育てる感覚で長く履いていく。それって自己満足かもしれないけど、すごく豊かな体験だと思うんです。

安田

自分にとっての豊かさを見つけていくのが大事なんですよね。特に経営者はそうですよ。どんなビジネスだろうが人間相手に商売をしているわけで、そういう感情から長く離れてしまうと、きっと事業もうまくいかなくなると思うんです。


藤原

そうですよね。欲しいものを手に入れるまでの過程や、それを持っていることの喜びが、経営者としての考え方にも通じている気がします。その一方で、欲しいものを躊躇なく買っていては、お客さんのニーズやマインドから離れていってしまう気もしますけど。

安田

本当にそうですね。自分の商売を俯瞰して見つつ、同時に当事者意識を持つ。結局このバランスなんでしょうね。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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