第45回 豊かな人生に必要な出会い

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第45回 豊かな人生に必要な出会い

藤原

実は今回は私から、安田さんに聞いてみたいことがあるんです。

安田

ほう、どんなことでしょうか。


藤原

人との出会いや付き合い方について、です。限られた時間の中で、どんな人とどう付き合っていくのか。きっと若い頃とは価値観も変わっていらっしゃるだろうなと思いまして。

安田

ああ、確かにその辺りの価値観は大きく変わりましたね。会社が潰れたのが46歳の頃だったんですが、それ以降は「残りの人生で何を選ぶべきか」を考えるようになりました。例えば本にしても、世の中の全ての本を読めるわけじゃないでしょう?


藤原

確かにどれだけ長生きしたとしても、全ての本は無理ですね。

安田

ええ。仮に死ぬまでに1万冊読んだとしても、それは世界中にある本の1%にも満たないんです。


藤原

へぇ、1万冊で1%以下なんですね。なるほど、だから「何冊読むか」より「どの本を読むか」が大事になってくると。

安田

そういうことです。考えなしに流行本を手に取ってしまいがちですが、それじゃあっという間に人生は終わってしまう。だから私、読んでいい本の数を決めることにしたんですよ。


藤原

ははぁ、なるほど。「あと◯冊しか読めない」と思えば、確かにただの流行本は選ばないですもんね。熟考して真剣に選ぶと。

安田

そういうことです。それ以降はいわゆる「無駄な読書」はかなり減ったように思いますね。…でね、ちょっと話は飛躍するようですが、このシステムを友人にも適用させることにしたんですよ。


藤原

えっ、どういうことですか。もしかして、付き合う友人の数を決めている…と?

安田

ええ、仰る通り。私、友人は「8人」と決めたんです。まぁ、厳密に8人ではないんですが、そう世の中に宣言することで、気軽に誘われることがかなり減ったんです。


藤原

ふ〜む、なるほど。そうすることで、本当に会いたい人と有意義な時間が過ごせるというわけですね。浅く広くではなく、狭いけど深い人間関係が築けそうです。

安田

そうそう。ちなみに私は人との出会いって必然だと思っているんです。出会うべき人とは自然と出会うようになっている。普段東京でしか会わないような友人と、旅先でばったり会ったりすることがあるじゃないですか。


藤原

ありますね(笑)。知人同士がつながっていたことを後から知ったり、本当に縁っておもしろいですよね。

安田

そうそう。そういう縁って、偶然のようで偶然じゃないんですよね。でも、友人が多すぎて忙し過ぎる毎日を送っていると、そういう必然の出会いを取りこぼしてしまう。だからこそ、その時その時の「今付き合うべき人」との時間を大事にしていきたいなと。


藤原

なるほどなぁ。私自身もこの対談含めて、安田さんとのご縁をいただいていることが本当にありがたいなと思います。まぁ、安田さんの貴重な時間をいただいているわけで、十分な価値を提供できているかいつもドキドキしているんですけど(笑)。

安田

いやいや、こちらこそです(笑)。それにしても藤原さんは「豊かな時間を過ごす」ということにすごくこだわっていらっしゃいますよね。


藤原

そうですね。でもそれはいわゆる「生産性の高い時間」ということでもなくて。あくまで「豊かな時間」なんですけど。

安田

わかります。私も価値を「損得だけ」で判断しない方がいいと思っていて。人生って、結局は「無駄な時間の積み重ね」じゃないかと思うんです。いくらお金をたくさん稼いでも、死後の世界には持っていけないわけで。


藤原

まさしくその通りですね。その中で、どの「無駄」を選ぶかが大事なんでしょうね。

安田

わかります。それで言うと私、「こだわり相談ツアー」という、相談者と食事をする企画を長く続けているんですね。それでいろんな人に会うんですけど、「私はなんでこの人と食事してるんだろう?」と思ってしまうことも稀にあって(笑)。でもそれだって「必要な無駄」だったんだろうなと。


藤原

それも含めての人生ですもんね。仮に「完全な無駄」であったとしても、全く無駄のない人生では味気ないですし。

安田

同感です。旅行で1分単位のスケジュールを決める人がいますけど、そんなに無駄を排除して意味があるのかな、とも思っちゃう。「何もない時間」や「何もなさなかった時間」も必要なんじゃないかという気がして。


藤原

確かに。「無駄な時間」だと感じられても、その時間によって作られている自分もいるわけですからね。

安田

人生には「遊び」が必要なんですよ。レーシングカーのハンドルみたいに全く遊びがないと、息苦しいし危ないじゃないですか。ちょっとハンドルを動かしただけで、ものすごい角度で曲がっちゃう(笑)。


藤原

それは緊張感があり過ぎますね(笑)。シーンによって遊びのない車と遊びのある車を乗り換えるのがベストな気がしますけど。

安田

確かに。遊びがありすぎる車ではレースに出れないし、レース仕様の車ではコンビニに行くのもしんどいですから(笑)。

藤原

そうですね(笑)。レーシングカーのように無駄を徹底的に排除した人生を送っていたら、どこかで虚しさを感じて進めなくなりそうです。目に留まったなんでもないものに意識を向ける時間も、豊かさの一部なんでしょう。

安田

そう思います。意味を求めずに過ごす時間こそが豊かさをもたらすわけで。旅行でも、観光地をひたすら巡るだけでなく、なんてことない公園でベンチに腰掛けて一息つくのも悪くないと思うんです。


藤原

そういう時間が本当の意味での贅沢かもしれませんね。何気ない時間こそが人生の豊かさにつながっていると。

安田

ええ。話が少し脱線してしまいましたが、こういう話ができるのもまた意味があるのかもしれません(笑)。


藤原

確かに(笑)。思わぬ方向に話が進むことも、おもしろさの一つではありますからね。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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