第49回 労働人口が半減する未来に求められる経営者の覚悟

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第49回 労働人口が半減する未来に求められる経営者の覚悟

安田

今、出生率がどんどん下がっていて、年間の出生数も70万人を切ると言われていますね。いずれにせよ、これから人口が減っていくのは間違いないわけです。


藤原

そうですね。「若者の手取りを増やせば結婚する人が増えて出生率が上がる」なんて言う人もいますけど、そこまで急激に改善するとも思えませんし。

安田

そうなんです。そもそも人口を維持するには出生率が2.07を超えなければいけませんから。1人も子どもがいない夫婦も珍しくない中で、皆が2人以上生むのは現実的には難しいですよね。


藤原

出生率を本気で上げようと思ったら、何十年、下手すると100年単位の取り組みが必要でしょうね。まぁ「移民政策」という手もありますけれど。

安田

それはもちろんわかるんですけどね。でも、今後日本の人口は5000万人までは減少すると予測されているわけです。つまり1億人の人口を維持したいなら、5000万人の移民を受け入れなければならない。そうなったらもはや「日本国」ではなくなってしまうんじゃないかと。


藤原

仰る通りだと思います。とはいえ、それ以外にこれという策がないのも事実なわけで。

安田

まぁそうですよね。労働人口が今の7000万人から3000万人に半減すると言われる中で、今までの経済規模を維持すること自体がほとんど無理ゲーです。まして、一発逆転の策なんてないでしょうからね。


藤原

そう思います。逆に言えば、「そもそも今の経済規模や成長率を維持する必要があるのか」という根本的な議論をするべき時代なのかもしれません。

安田

確かにその視点は重要ですよねぇ。とはいえ、急に日本人全員が「もう経済活動はやめてのんびり暮らそう!」とはならないわけで、やっぱり国は今まで通り運営していかないといけない。だとすると、労働力が下がる分はやっぱり「一人あたりの生産性を高める」しかないような気もして。


藤原

ああ、なるほど。確かにそこは必須課題でしょうね。実際、今の日本人の1人あたりの生産性は先進国で最下位と言われてますし。

安田

そうですよね。今はとかく「税金や社会保険料が上がって苦しい」みたいに言われますが、個人の生産性が上がって収入が2倍3倍になれば、自動的に税収もアップしていくわけで、その結果「減税」ということもできるようになるかもしれない。…ただ、生産性を上げるって、口でいうほど簡単じゃないんですよね。


藤原

そうですね。AIなどを使って効率化できる部分はかなり増えましたけど、イコールそれが生産性アップ、さらには直接的な収益に結びつくかというと、それはまた別の問題で。利便性が上がればいわゆるコモディティ化が起きて、技術が大衆化して価格は下がる傾向がある。

安田

そうそう。つまり意図的に価格を上げていく必要があるわけですよね。特に「その人にしかできない仕事」については、高い付加価値をつけるべきじゃないかと。


藤原

仰るとおりです。その人にしかできない価値が提供できるからこそ、価格を上げても納得してもらえるわけで。一方で、「誰がやっても同じ仕事」は、いかにコストを抑えられるかが重要になってくるでしょうね。

安田

そうなんです。そう考えると、「人件費に利益を乗せて売る」というビジネスモデルは限界に来ていると思うんです。


藤原

一人あたり50万円の利益が出るから200人雇う、というような「足し算の経営」ですよね。単純に人数を増やして全体の利益を稼ぐやり方というか。

安田

そうそう。そういうビジネスモデルでは、人が単に「コスト」として扱われがちで。それでは結局1人あたりの生産性は上がっていかない。


藤原

確かに、人を「コスト」ではなく「価値を生む存在」として捉える視点が必要ですよね。そういう意味では、「無人化で効率を追及する仕事」と「高付加価値を提供する仕事」を分けて考えなければいけないんでしょうね。

安田

ええ、まさに。例えば高度な技術を持つ職人やクリエイティブな仕事を担う人材には、もっと大きな付加価値を付けるべきだと思います。一方で、効率化できる部分はテクノロジーで無人化を進める。


藤原

なるほどなるほど。その二つを適切に振り分けることが重要なんでしょうね。

安田

そう思います。だからこれからは、「1人工いくらで…」と単純計算で考える時代ではなくなると思いますよ。「この人がいるからこそ、価値が何倍にもなる」という仕組みを作らないと、いずれ成り立たなくなる。


藤原

確かにそうですね。採用の面で考えても、「そこで働くことで得られるメリット」が感じられないと、優秀な人は集まらないですし。

安田

そうそう。例えば「この社長のもとで働けば、同じ1時間が5倍のパフォーマンスになる」というビジネスモデルがあるとか。その代わり、社員自身もスキルを磨き続ける覚悟が必要ですけどね。


藤原

そこで頑張るかどうかは本人次第ですけど、頑張った場合はその努力がきちんと収入ややりがいに繋がる、という環境が重要ですよね。

安田

そう思います。それに、既に人不足で困っている会社も多いですが、3~5年後には今よりもっと人が足りなくなると思うんです。人が採れないというだけでなく、社内に残っている社員が一気に辞めてしまう可能性も十分にある。そういう意味でも社内環境の整備は必須になってきているわけで。


藤原

仰るとおりです。逆に言えば、「自分の努力が会社の利益に直結している」と社員が感じられる仕組みさえ作れれば、きっといろんなことがうまく回り始めるんです。会社の売上もあがり、結果、社員一人ひとりの収入も上げられるようになる。

安田

仰るとおりですね。今の日本人の平均所得は400万円くらいですけど、それを1000万円まで引き上げるくらいの感覚が必要だと思います。つまり経営者が社員の給料を少なくとも2倍以上にはしていかないといけない。

藤原

そうですね。1割2割上げても根本的な解決にはなりませんから、そこを本気で目指すべきなんでしょうね。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

Twitter

1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから