第56回 刺さる強みの見つけ方

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第56回 刺さる強みの見つけ方

安田

私はいま「日本人の平均年収を1000万円にする」という目標に向かって活動しているんですが、その実現のためには、「給料の高い会社に就職する」か、「フリーとして稼ぐ力を身につける」かの二択になってくると思うんです。


藤原

ええ、本当にそうですね。

安田

フリーで稼ぐ力をつけるなら、自分の得意なことを商売として成り立たせることが最短だと思っていて。だから私がお手伝いをするときには、その人の持っている強みを活かすということを常に意識しているんです。


藤原

なるほど。仰るとおり、強みを活かすのは大事だと思います。

安田

そうですよね。でも藤原さんは「強みは絶対的なものではなく相対的なものだ」とよく仰ってるじゃないですか。それを理解することが、豊かに生きるための大切なポイントだと。今日はそのあたりを深堀りできたらなと。


藤原

ありがとうございます。具体例を出すとわかりやすいと思うんですが、チェーンのハンバーガーショップなんかでは、「早く出てくる」ということが特徴の一つとしてありますよね。

安田

そうですね。まさにファストフードと呼ばれる所以で。代表的な強みだと思います。


藤原

でも「ゆったり会話を楽しみながら食事がしたい」という人にとっては、その「早い」という部分が弱みにもなりかねない。急かされて落ち着かないと感じるかもしれないわけで。

安田

ああ、確かに。高級なフランス料理を食べに行って、最初の10分で全部の料理が出て来ちゃったら困りますもんね(笑)。そんなお店にはもう二度と行かないだろうな(笑)。


藤原

そうですね(笑)。一方で、サクッと食べて次の予定に向かいたい人にとっては、早く料理が出てくるのは間違いなく強みであるわけです。店内がくつろぎにくい構造でも、「回転率を上げる」という視点ではメリットになります。

安田

確かにね。「10分以内に食べ終わりたい」なんて人もいますし。


藤原

ええ。だから、もしファストフード店に「お客様にゆったりとくつろいでいただけるソファを導入しましょう」っていう提案をしても、意味がないわけです。仮にそれが純粋なホスピタリティからの提案であっても、「回転率を上げたい」という店のニーズとバッティングしてしまっている。

安田

確かに確かに。ファストフード店なのに高級レストランみたいなことをしてもマッチしないわけですね。「お客様、まずはこちらのポテトからどうぞ」なんて一つ一つ出されたら、「早く全部持ってこい!」と言われてしまう(笑)。


藤原

そういうことです(笑)。つまりこれが「強みは絶対的なものではなく相対的なもの」の意味なんです。ある場所では強みであることが、別の場所では弱みになったりもする。これは人間も同じで、人それぞれ個性があるので、その「個性=強み」と見なされる場を見つけられるかがキーになるんじゃないかと。

安田

なるほど、わかりやすい。さっきのソファの例で言えば、「とにかくお客さんに喜んでもらえる環境を提供したい」という人は、それを最大限活かせる職場がきっとあるはずですもんね。


藤原

そうそう。単にファストフード店だとミスマッチというだけで(笑)。まぁ最近は、「自分の強みは何か」がわからない人も大勢いるそうですが。

安田

昭和30年くらいまでは個人で商売してる人がすごく多かったわけで、つまり皆が普通に自分の強みを活かして商売していたわけですよ。そう考えると、「会社」という仕組みが普及してから、少しずつ「自分の強み」という考え方から離れていってしまったのかもしれませんね。


藤原

企業側も「条件採用」のような形で人を雇うのが一般的になり、働く側も自分の強みを発揮できないまま仕事を続けることになった、という流れがあるんだと思います。

安田

会社を拡大するには、オペレーションをしっかり組み立てて、決まったことを正確にこなす人を大量に雇う、という方向になりがちですからね。ホスピタリティを発揮したいなら、そういう文化がある会社や職場を選ばないと。ちなみに「自分の強み」ってどうやって見つけたらいいんでしょう?


藤原

そうですね。「何時間やっても苦にならないこと」や「自分が没頭できること」の中で、同時に「誰かの役に立つこと」はないか。そういう視点で考えると見つかりやすいんじゃないかと思います。

安田

確かに、「誰かの役に立つ」って大事ですよね。もっとも全員のニーズを満たす必要はなくて、1万人に1人とか、10万人に1人のニーズでもいい。日本人だけでも1億人いるわけですから。ちなみに私、職業って、人口増加に比例して増えると思っているんです。


藤原

ほう、それはどういうことです?

安田

例えば世界に100人しかいなかったら、「プロ野球選手になります!」なんて言ったら「遊んでないで働きなさい」って怒られちゃうと思うんです。でも1億人だったら休みの日に野球を見たい人がいる。だからそこをターゲットにすれば職業として成り立つわけです。


藤原

ああ、確かに。しかもインターネットというツールによって、万人受けしない「尖った強み」も世界に向けて発信できるようになりましたからね。

安田

そうなんですよ。むしろ「これ、大丈夫かな?」って思うような尖った強みほど、誰かにとってはすごく魅力的に映る可能性がある。だからこそネットを活用して、自分の強みを発信してみるのがいいと思います。仮に1億人のうち1人や2人しか興味を持ってくれなかったとしても、その人たちを全力で喜ばせるところから始めればいい。

藤原

本当にそうですね。周りの100人に否定されたとしても、自分の強みを「こんなの強みじゃない」と諦めないでほしいと思います。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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