第66回 「弱い遺伝子」が必要な理由

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第66回 「弱い遺伝子」が必要な理由

安田

前回、「強い遺伝子が残っていく」という話が出ましたよね。裏を返せば、「残った人は強い遺伝子を持っていた」とも言える。つまり社会で生き残れないような「弱い遺伝子」は自然に淘汰されていくってことじゃないですか。


藤原

そうですね。理論上はそうだと思います。

安田

でも人間社会には「弱い存在」「弱い人」がずっと残っている。これって単純に不思議じゃないですか? 全体としてどんどん強くなっているから、相対的に弱く見えてしまうだけなのか。


藤原

う〜ん、面白いけど難しい疑問ですね。相対的に弱く見える、ということもあると思いますし、そもそも「社会」というところには一定の「弱い存在」が必要なんだと考えることもできる。

安田

なるほど。確かに強い人ばかりだったら、社会としては成立しない気もしますね。例えば戦国時代は「殺傷能力が高い人=強い人」だったわけですけど、田畑を耕す人など「殺傷能力が高くない人」も必要なわけで。


藤原

そういう意味では、弱いと言われる人たちにもそれぞれ役割があるんじゃないですかね。

安田

ああ、確かに。人間社会は特にそんな感じがします。強いリーダーとそれに従う人、という図式がいろんなところにありますし。一部のめちゃくちゃ稼いでる人がいて、大多数はそこそこの収入というのが最もバランスがいいのかもしれない。


藤原

現実的にそうなってますもんね。良い悪いではなく、これが自然なバランスなんでしょう。

安田

全員が商売上手だったら、お金儲けの戦国時代になっちゃいますから(笑)。


藤原

確かに(笑)。一方で、商売上手な人も別の能力は欠けていたりするんでしょう。例えばめちゃくちゃお金儲けは上手だけど、たくさんの女性を泣かせているとか。渋沢栄一なんかもそうだと言われてますけど。

安田

確かに「強い」「弱い」って、測る基準によって全然変わってきますもんね。そもそも「お金持ち」っていうのも「誰かと比べたら稼いでる」という比較論でしかないわけで、別に絶対的な「強さ」ではない。


藤原

そうなんですよね。あくまで相対的なものだから、「全員がお金持ちになる」ということはありえない。

安田

ええ。そう考えると、1人の大金持ちを作るには「お金持ちじゃない人がたくさん必要」という理屈になりますね。「お金持ちじゃない人」を弱い存在とするなら、確かに社会には「弱い存在」が必要ということになる。


藤原

そうですね。必要なんだと思いますよ。あるいはリスクヘッジとして「様々なタイプの遺伝子を残す」ということが重要なのかもしれません。

安田

ああ、確かに。中でも人間の社会は複雑だから、動物みたいにシンプルな弱肉強食の世界じゃないんでしょうね。それこそ「多様性」が求められる所以というか。


藤原

仰るとおりだと思います。疫病や自然災害などが起こっても全滅しないで済むように、上手に設計されている気がしますね。時代によってどういう人が強者かっていうのも変わってきますし。

安田

例えば今だったら、毎日カタカタとパソコンをいじっていられる人が強者だったりする。


藤原

一昔前だったら絶対違いましたよね。「もっとアクティブにならないと」みたいな。

安田

絶滅していく動物がいる一方で人間がこれだけ繁栄してるのは、そういう「変化を内包した進化」をしているからなのかもしれませんね。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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