人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。
第78回 AIが終わらせる「求人ビジネスの矛盾」

露骨に言えば、紹介会社やエージェントが儲かる仕組みそのものが利益相反を生んでしまっていると。なかなか根深い問題ですよね。

そうなんです。この問題を解決するには、社会全体の考え方が変わっていく必要があると思っていて。例えば、「いい人を採用する」ことを目的にせず、「ひたすら自社の採用力を高める」ことに注力する会社が増えていけば、自然と求人ビジネスの形も変わっていくと思うんですよ。

ああ、仰るとおりだと思います。「誰に来てほしいか」「どういう人なら活躍できるか」を突き詰めて考ないといけませんよね。自社に本当に必要な人はどんな人なのか、いまいちボンヤリしたまま求人を出している会社も多いわけで。

そうですよね。さらにいうと、企業だけじゃなく求職者側にも変化が起きてくると思うんです。AIが「この人はどういう仕事に向いていて、どんな働き方を望んでいるか」を学習して、「あなたならこの会社のこの職種が合いそうです」と提案してくれるようになったり。

そうそう。だから採用サイトを作るにしても、「風通しがいい」とか「社長と話しやすい」みたいなテンプレ表現だけじゃダメで。誰にとってどういいのか、あるいは「こういう人には合わない」まで、しっかり伝えないといけない。

なるほど。「多くの人にとっていい会社」ではなくて、「こういう人には最高の職場」という打ち出し方をしていくわけですね。そういう世界になってくると、今までみたいな「たくさん応募を集めて選ぶ」みたいな手法ではなくなっていくでしょうね。

仰るとおりだと思います。「まずは10人応募してもらって面接をしながら選んでいく」なんて発想は、もうやめたほうがいい。自社にピッタリの1人から応募が来ればいいわけですし、そういう人は定着・活躍してくれる可能性も高い。

確かにそうですね。実際今は「とりあえず就職したい」よりも、「ここで働きたい」の方が大事だと考える人が増えてきているし。配属先の上司との相性まで含めて、細かくマッチングされる世界が近づいている気がします。

そう考えると、結局のところ「どう情報を届けるか」がカギなんですよね。その主戦場が、今までのようなGoogle検索からAIに完全に切り替わっていく。それを理解している会社が、ターゲット通りの人を採用できるようになるんでしょう。
対談している二人
藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表
1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。