最近、ある大きな格闘技のイベントがあり、その運営者の外国人オーナーの発言が物議をかもしました。
格闘技の選手は試合前に体重を計り、決められた数値以下であることが義務なのですが、片方の選手がそれを数百グラムオーバーしました。そうしたらオーバーした方が自動的に負け、ということはプロのイベントの場合、まずありません。
試合の重要度にもよりますが、へたをしたらイベント自体がふっとんでしまうからです。
たいていの場合、ファイトマネーの一部を超過した側から相手に譲らせるなど、双方間で利害調整を行い、試合を行います。
しかし、今回、体重制限を守った選手が試合を受けないことを表明しました。実際、体重が軽い側が調整に応じると肝心の試合で不利になることが往々にしてあるのですが、ともあれ試合はキャンセルになりました。
外国人オーナーは、それに対して、「たった数百グラムで試合を流すとは何事か」と記者会見で激怒したのです。
このオーナーはもともと格闘技の専門家ではなく、金融で財を築いた事業家でした。
もともと本人の趣味でもあったようですが、成功した事業家が自分のビジネスのひとつとして格闘技に取り組んでいることからすれば、スポーツとしての公正さとイベントの履行を天秤にかけ、どちらに重きを取るかは明白です。
しかし、日本で開催された大会だったためか、この件は逆に炎上を呼び、結果的にオーナーがしぶしぶ謝る、という顛末になりました。
カスタマーであるファンの中にもオーナー側の意見につく人もいましたが、大勢は「ルールを守った方を攻撃した」ことを非とする意見が占めていました。
しかし、正直、わたくし含めたファンというのはかなり場当たり的で移り気で、スポーツなど、エンタメ以上でも以下でもありません。
そして、実生活で身を置いているのは、スポーツではなく、そのオーナーと同じ、(次元レベルの差はあれど)ビジネスの世界であるはずです。
スポーツが「ある閉じられたルールの中で優劣をつけるもの」、ビジネスが「経済的な価値を追求するもの」だとすれば、社会人としての倫理観は後者が中心にくるのが自然なはずで、この件であれば、「そりゃまあ、プロならなんとか試合して欲しかったよな」と思うのが多数派になりそうです。しかしそうはなりませんでした。
これは、人の倫理観は複数の視点があったりして想像以上に複雑なのか、それともわれわれの大多数が単にポンコツで、ビジネス感覚がプアすぎるのか……。