その164 自己肯定感

ちょっと聞きかじったところだと、自己肯定感という言葉は、以前からあったものの、一般化してからまだ10年くらいしか経っていないそうです。
用語として存在することと、誰もが使うのとはまた違うようで。

たしかに、以前は使われているところを見たことがない言い方が、いつのまにか使用度ランキング上位にきていることはよくあります。

いま、「自己肯定感」と言い表している内容は、従来何と呼んでいたかといえば、「自尊心」あたりになるでしょう。狭い意味では「プライド」「自己愛」も近いものがあります。

ただ今では「自尊心」とはあまりいわなくなったと思います。

自尊心といったら、たいてい「自尊心が傷つく」とか、「自尊心が肥大して」いうような表現が多く、日常のシチュエーション的に使いづらいのかもしれません。

世の中でけっして少数派でないであろう、自己肯定感の高くないひとびとからは、もともと傷ついたり肥大するほどの自尊心をもってねーよ、といわれそうです。

また、自己肯定感に近いところで「自信」だと、少し指し示すものが違ってきます。

自信は、できることや持っていることについてのプラスの態度になりますが、自己肯定感だと、評価的にマイナスなことをひっくるめて肯定する感情になるからです。

自信があって自己肯定感がついていかないことはありませんが、自信がなくとも自己肯定感を保つことは可能です。

ひるがえって実際の生活に目を向けますと、経済的には明確に世界から取り残され、かつ今後も挽回することはない日本に在住し、物価の高騰で実質賃金が下落し、こまごまとした不安の種は尽きなくとも、現実は現実、明日も生きていかねばなりません。

そういう意味ではアナと雪の女王よろしくレットイットゴー、「ありのままの自分」を受け入れる度合いこそが「自己肯定感」なのですから、これはまさにこの10年の日本の気分を如実にすくいとった尺度といえるのではないでしょうか。

「自尊心」とか「自信」のような最初からちょっと強そうな物言いではなく、よりフラットに、できれば高い方がいいな……自己肯定感……みたいな。
 

 

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