日々なんらかの仕事をしていて、良いこと悪いことが均等にやってくるということはあまりなく、たいていの人はネガティブな出来事の方が目立つことが多いのではないでしょうか。
ほかの人から好ましからざる反応を投げかけられる、ということもそのひとつで、個人的には、関わっている業務のいわゆる「現場」の人から、過去に何度か同じようなことを言われたことがあります。
「そりゃあ、やるのが仕事だからやりますけどね……」
「……結局、われわれが最後に苦労することになるんだよなあ」
あくまで個別のことで、そういった仕事の人がすべて同じではなく、場合により人によりまちまちです。それでも昔にこのフレーズをたまわったときは、ちょっとしたインパクトを感じたものです。
大の大人がこんなことを口にするのか、と。
いうまでもなく、そこには甘えや自己憐憫的な感情がぬっとオモテに表れており、仕事の常識的な距離感からは逸脱した言い方です。もともとちょっと特別な、友人のような関係であれば許容されるかもしれませんが。
しかし、個人の性格はおくにして、そういった言動が発生するには、なんらかの背景があるものと考えられます。
そこで、わたくしがひそかに至った結論としては、
「減点主義的世界観」
がそれらの源泉ではないか、と推測しています。
かつて日本的製造業の誇りとして「カイゼン」がありましたが、それは製造従事者自身が前向きなマインドを持って環境を飽くことなく良くしていく、という概念であったと思います。逆にいえば、明確なインセンティブによるものではなく、良きこととして作られた、架空のストーリーに沿ってモチベーションを煽っていく手法が製造業を代表する価値創造だったわけです。
そんなところからストーリーを抜いた、リアルの現場では、働く人間のインセンティブはいつまでたっても見つかりません。つまるところ、価値評価は、昔ながらの減点主義に行きつくのです。
そして自然と思うのです。
ミスをしたときだけ取りざたされる、イヤなことに拒否権がなく押し付けられる、オレたちなんてかわいそうなんだ、と……。