今日の日本ではおそらく
あまり人気のある競技ではないと思いますが、
個人的にボクシングというスポーツが好きでして、
最近は日本人でも世界に届くスーパースターが誕生して大変楽しいです。
そのスター選手、直近の試合のギャラだけでも6~7億円ともいわれており、
本当に世の中で評価を獲得した証左といえるのですが、
それにしても
大金を得たからすごい、というわけではまったくなく、
むしろそれまでの圧倒的実績を考えれば
ジャンルの規模を超えた人気も、破格のギャラも、
高すぎるということはないように思います。
彼は兄弟も世界チャンピオンであり、
父親は自身のトレーナーを務めている、家族チーム型の運営のもとで活動しています。
どのスポーツもトップレベルになれば、コーチもコンディショニングも
それぞれのプロが分業で行うことが一般的かと思いますが、
格闘技系の場合なぜか国内海外を問わず
父親がハブになったチームを組み、戦っていく体制で
行うことが少なくないようです。
また、名声が高まった結果、最近では父親にスポットを当て、
どんな思想でいかに育てたかということまでコンテンツになっていたりします。
十数年ほど前にも、同じボクシング、同じ家族型のチームで
一世を風靡した兄弟選手がいました。
その話題性は試合のテレビ視聴率が40%を記録したほどでしたが、
いまでいう炎上マーケティングを全力で展開した結果だったために
選手としての評判はあまり良くありません。
(実際にキーマンの父親が関係者に手を出したり恫喝したりということもあったので、
致し方ないところもあるのですが……)
かたや家族をふくめて英雄のような扱い、
かたや悪役キャラで塗り固められた存在、
その違いはどこにあったのでしょう。
そもそも、前者はプロアスリートチームの構成者としては普通の人であり、
常識的でないのは選手本人のリングパフォーマンスだけです。
それに対し、後者がもし同じように正面から対戦相手にぶつかっていたら
世界の舞台では勝ったり負けたりになっていたと思われ、
地味な存在で終わっていたでしょう。
そうならなかったのは
おそらくチーム内部では突出したとはいえない選手としての実力を正直に評価し、
負けるリスクを最低限にする相手選びを行いながら
試合以外のパフォーマンスで世間の興味をつないできたからです。
炎上マーケティングがベストの方法かはわかりませんが、
チームの戦略としては「自分ができることをやった」結果なのです。
つまるところ、両者の違いは
片方が高潔で片方が邪悪であるとかいうことではなく、
「リングの中、パンツ一丁で本人に何ができるか」
というシンプルな能力の違いに行きつくのです。