第199回 マイナスを引くという選択

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

「お店の売上をもっと伸ばしたい」
これは商売をしている人の多くが望むことだと思います。

そこで私たちは考えます。
「自分のお店に足りないものは何だろう?」と。

売上が期待通りに伸びないのは何かが足りないからだ。
だから、その足りない何かを見つけてお店に加えることができれば、売上は伸びるはず。

確かにこの考え方は、一見問題がないように見えます。
でも、実際にこれまで店舗商売をしてきた経験を振り返ってみると、こう考えるよりも前に、私たちには疑うべき1つの前提があると思うのです。

それが「足りないという認識自体が正しいのか」ということです。


足りないものを付け加えてお店をより良くしていく。
私はこの取り組み自体が間違っているとは思いません。

ただ、この「お店に何かを足す」という取り組みに、いまの私が感じる問題点というのが、売上を伸ばそうとするあまり色々なものを足しすぎると、逆にお店の強みが見えなくなってしまうということ。

事実、私は過去に「何かを足せば売上は伸びる」と考えて、商品を増やしすぎてしまった結果、お客さんからすれば何にこだわりを持っているのかが分からない、売れないお店になってしまった経験があります。

では、なぜ私たちは足すことばかりを考えてしまうのでしょうか?
その原因の1つには、少なからず学校で学んだ足し算、引き算の考え方が影響しているように感じます。

確かに売上という結果を増やすためには、何かを足すという足し算の選択肢しかないように思えます。
ただ、足し算引き算で売上を考えるのであれば、もう一つ結果を増やす方法があったはずです。

それが中学校で学んだ「マイナスを引く」という計算方法であり、仮に足し続けるのが大手の方法であるならば、このマイナスを引くことでプラスにするという方法こそが小規模経営の取るべき選択なのではないでしょうか?

大手と同じ方向に進むのが小規模経営にとってマイナスであるならば、そのマイナスを引くことで逆にプラスの結果を作り出す。お店に足りないものを探して何かを足すことで売上を伸ばそうとするのではなく、お店のマイナス要因となっている可能性があるものを引き、残ったものを磨くことで売上を伸ばす。

マイナスを引くとプラスになる。

中学生だった当時はどうにも納得がいかず、どうせ実際に生きていく上では使うこともないだろうと思っていたこの規則。

この規則に対する私の解釈が正しいのかは分かりませんが、少なくとも将来使うこともないだろうと思っていたこの規則が、私の今の商売に役に立っていることは事実なのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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