「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。
第3回 「使えるお金・使えないお金」
前回「お金が崩壊するとき」では、人間がお金を稼ぐ目的やその方法、これからのお金の価値にについて話が進みました。
「お金はいずれ崩壊する」ってことでしたね。
はい。崩壊して、復活して、また崩壊しての繰り返し。
単純に考えるならば、お金って権利だと思うんですよ。
権利ですか。
はい。例えば1億持ってたら、自分が一切何もやらなくても「1億円分は誰かに働いてもらえる」という権利。
なるほど。貯金イコール権利の貯蓄ということですね。
はい。お金さえ持ってれば、いっさい役に立たなくても、食べたり、飲んだり、肩を揉んでもらったり、できる権利。
逆の立場でいうと、その分の仕事を「誰かが肩代わりしなくてはならない」ということになりますね。
そうなんです。だから金融経済が、どんどんふくらんでいくと・・・
金融でお金を増やした人たちの権利が、どんどん増えていく。
はい。すると、残りの人たちは、借金したわけでもないのに、その分働かなきゃいけなくなる。
なるほど。嫌な社会ですね。
その嫌な権利の半分を、世界のトップ数十人が握ってるわけですよ。
これから、その割合はもっと増えていくでしょうね。
そうなってくると、この数十人は「いないほうが、いいんじゃないか」って気がするんですけど。
抹殺してしまえと?
いやいや、私は平和主義者なので。抹殺するんじゃなくて、仲間はずれにするんですよ。。
仲間はずれ?
いくら金をつまれても、あなた方には一切何も売りません。一切サービスしません。という風にしたらどうでしょう?
人類みんなで仲間はずれにすると(笑)
はい。そしたら、その人たちの権利分の「お金と交換に、やらなくちゃいけないこと」はやらなくて済む。
いいですね。じゃあ、世界を半分に分けて「こっちはこっちでやるから、そっちはそっちでやっといて」と。
はい。そっちはお金持ちだけでやっててください、と。
そっちは、十数人しかいませんけどね、と(笑)
お金以外の「新たな価値交換ルール」を作れば、可能じゃないですか?
地域通貨とかは、でき始めてますね。
でもやっぱり、ほとんどの人は地域通貨ではなく、円を欲しがるでしょうね。
金持ちの思うツボですね。
そうなんですよ。お金を欲しがれば欲しがるほど、金持ちの思うツボ。
何とかなりませんか?
だから私は、物々交換を推奨してるんですよ。
物々交換ですか?
はい。私自身も仕事の2割くらいは物々交換でやってます。
おもしろい!
これを政策としてやったらどうですかね。
政策ですか?
物々交換でしか手に入らないものを決めるんですよ。お米とか、野菜とか。
「あなたの持ってるお金では、これは買えませんよ」と。
はい。シャネルとか、ダイヤモンドとか、贅沢品はお金で買えるんです。でもお米とか、食べ物とか、必需品は「働かざる者食うべからず」で、何か労働しなくちゃ手に入らない。
「ありがとう」と言ってもらえる価値が、流通するのが経済なんですよ。本来は。
でも「お客様は神様です」とか言っちゃってますから。
お金をもらった側が「ありがとうございます!」って頭を下げてしまう。
変ですよね。
社会全体がお金の暗示にかかってますね。
ぶっちゃけ、泉さんはどうなんですか?
私ですか?
はい。実際問題として、泉さんに講師をお願いして「感謝しています」「でもお金ないんです」では受けないでしょ?
いや、そんなことないですよ。そこがお米屋さんだったら「1年間泉さんのお米まかしといてください」とかでも、ぜんぜん大丈夫。
ホントですか?お米の依頼ばっかり増えちゃいますよ。
今の生活がやっていければ、ぜんぜんOKです。たとえば、東京電力で研修したら「泉さん1年間電気代いいっすよ」みたいな。(笑)
すごいですね。
だって、そのほうが気持ちいいですよ。
でも実際には、泉さんみたいな人は稀で。やっぱり、ものじゃなくて金でほしいと。
圧倒的にお金の方が人気ありますね、残念ながら。
たとえば、現金3万円より5万円分のお米の方が得ですよね。どうせ食べるんだから。けどみんなお金ほしがるでしょ?あれはなぜですかね。
やっぱり「自由にいろんなものに換えられるから」でしょうね。
財布に現金がたくさん入ってると、それだけで豊かな気分になりますもんね。
安田さんはどうなんですか?やっぱり嬉しいんですか?
財布に現金がいっぱい入ってたら?
はい。
いや、別に嬉しくはないけど、安心はします。
嬉しくはない?
う〜ん。やっぱり、嬉しいですね(笑)
安田さんも洗脳されてますね(笑)
それは否定できませんよ。100%物々交換でいいとは、やっぱり言えません。
今の生活が、何不自由なく出来るとしても?
はい。それとは別に自由になるお金は欲しいです。億とかは要りませんけど。
いくらぐらい欲しいんですか?
年間200万円くらい。
じゃあ逆に、現金はそのくらいあればいいと?
家賃が要らなくて、電気代や水道代もかからず、食料ももらえるんだったら、それだけあればハッピーですね。
もう一回、昔みたいに「お金使いまくる」みたいな欲求はないですか?
ないんですよ。
そうなんですね。
昔は常に財布に50万円くらい入ってて、年間に何千万円も使ってました。
知ってます(笑)
でも、ぜんぜんハッピーじゃなかったです。
今振り返ってみれば?
いや、その当時から、ぜんぜんハッピーじゃなかった。
多くの人はそれを望むんですけどね。
たぶん人によるんですよ。
どういうことですか?
人によって適量があるんですよ、お金の。
おもしろい。
私は「現金200万円が一番ハッピー」という星の元に生まれてるんですよ。
それ以上あっても意味ないと?
かえって不幸になってしまう。じっさい、いまの方が充実してますもん。
そう、思い込んでるだけかもしれませんよ。
たくさんあったとしても、きっと使わないですね。今だったら。
なぜですか?
一番快適な金額というのが分かってしまったから。
まあ僕も「今よりもっともっと稼ぎたい」とは思わないですからね。
いつ頃思わなくなりました?
けっこう前ですね。ある程度稼げて、生活していけるようになったら、そういうのはなくなりました。
学習がはやい。さすがです。
いやいや。
私なんか、必要以上にお金を欲しがり続けて、無意味につかって、結局虚しかっただけですもんね。
月に行ったらよかったのに。
思いつきもしなかったですね。
ホントに。よく、あんなこと考えつきますよね。
やっぱり才能ですよ。お金を稼ぐのも能力ですけど、使うのにも能力がいるんですよ。
能力以上には使えないと。
はい。使ったら不幸になると思います。
…次回第4回へ続く…
場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談
第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。
第2回:「お金が崩壊するとき」
お金の価値が変わると、お金を稼ぐ方法、稼ぎたい理由も変わってきます。