「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。
第35回「もう教科書はいらない」
前回、第34回は「教育は訳し方を間違えた」
なぜ親は学校に行かせたがるんでしょう。私、個人的には疑問なんですけど。
安田さんは子供が「学校行かない」って言っても平気ですか。
「べつに学校なんか、行かなくてもいいんじゃないの?」と思ってます。けど「明日から学校行きません」って言われたら、不安はあるでしょうね。
私がいちばん不安に思うのは、周りから攻撃されるんじゃないかということ。街歩いてると「あいつ行ってないやつや」とか。
ありそうですよね。
そういう攻撃をされたときに、まだ撃ち返すだけの力がないと結構しんどい。
じゃあ、どうするべきなんですか?明確な理由もなく「どうも行く気しません」みたいに言われたら。
私だったら「次どうする?」みたいな相談しますね。
なんか身の回りで増えてる気がするんですけど。学校いかない子どもが。
増えてますよ。場活を勉強してる人の子どもが、中学生で起業しちゃいました。
学校は行ってないんですか?
行ってない。
でも学校を卒業して、いい会社に入って、安定した生活をすることが目的だったら、べつにそれでいい気もするんですけど。稼げるんだったら。
ぜんぜんいいと思いますよ。
でも「そんなのは長続きしない」って思ってる人、多いじゃないですか。
多いですね。
そこは、やっぱり洗脳ですかね。
洗脳がうまいんですよ、やっぱり。
誰が洗脳してるんですか?
誰じゃなく、何のためにですね。社会の必要性として洗脳してるんですよ。
もともとは軍隊だったからいいんでしょうけど。今は必要ないじゃないですか。
標準化の社会では有効だったんですよ。単一のカルチャーでガンガンCM流して、標準化して、大量生産して、大量消費させて。
なるほど。でも、なんで親って、子どもが学校行くと安心するんでしょうね。
やっぱり社会から認められるからですよ。私も京都大学に入っただけで親が安心しちゃった。その後の人生なんて何も考えてなかったのに。
じゃあ、学校行って、勉強ができて、その地域でいい学校に進学しとけば、親としては安心すると。
安心ですね。だから親の安心のために行かせてるんじゃないですか、あれは。
それでいいんですかね。親って子どもの将来のために一生懸命考えるべきじゃないですか。それって一生懸命考えてないですよね。
将来がわからないんですよ、たぶん。だって、学校の教育って「将来どういう社会になるかみんなで議論しましょう」なんて一切やらないので。
でもヒカキンみたいに、そこらへんの会社員より稼いでる人って、たくさん出てきてるじゃないですか。
もう、いっぱいいますよ。
でも、そういう人を見ても「どうせ、そんなの長続きしないよ」って否定するじゃないですか。いつになったら認めるんですかね。
認めない人は、ずっと認めないでしょうね。
たとえば、ゆたぼん君がこれから独自の勉強をして、東大に入ったとしても認めませんか?
認めないでしょうね。「彼は特別な家庭教師をいっぱいつけられた」とか理由をつけて、自分を納得させる。
日本人って、もう民族として、異端の人が許せないんですかね。
大谷くんの二刀流も叩かれてましたもんね。
でも今は、日本国民みんなが応援してるじゃないですか。あの変わりようは何なんですか。ナイスガイだからですか?それとも、ちゃんと高校出たからですかね。
誠実な感じだからですか。異端っぽくないから。
ああいう好青年、好きですよね日本人は。彼女も作らず、車も買わず、ちゃんと練習して。
さわやかな笑顔であいさつするっていう。
毎晩酒飲んで、それで結果残す人とか認めませんよね、日本人って。
むかしは「かぶき者」って言われて、異端が好きだったんですけどね。
へぇ。じゃあ、受け入れられる文化があったんですね、むかしは。
そうです。すべては洗脳教育からこうなったんですよ。
もう長いですもんね。ほぼ全員が洗脳世代になっちゃった。
ホントはもう、教科書っていらないと思うんですよ。Webで検索したら一発で出るじゃないですか。なんで教科書産業があるのかわからない。あれが元凶ですよ。
教科書が諸悪の根源だと。
だって、教科書に書いてあること、誰も疑わないじゃないですか。「間違えてるんじゃないですか?この教科書」って誰も言わない。
そりゃそうですよ。教科書を疑ってたら授業にならない。
それがダメなんですよ。
じゃあ、教科書は廃止したほうがいいと。
iPadで十分ですよ。あんな重たい本もっていかんでも。
でも検索だと、答えがしょっちゅう変わっちゃいますよ。「こういう意見も出てますね」とかいう感じで。
いいじゃないですか。
えらくいい加減な教育ですね(笑)
いい加減でいいじゃないですか。そもそも答えなんて1個じゃないんですから。
まあ、そうですよね。現実社会では。
いまだに軍隊教育なんですよ。日本には軍隊はないはずなのに。
軍隊教育では答えはひとつなんですか?臨機応変じゃなく。
だって、軍人って間違えたら人が死ぬので。間違えてはいけないんですよ、絶対。伝言とかも間違えてもいけないし、ミスが許されないじゃないですか。
たしかに。だからすごく失敗を恐れるんですかね、日本人って。
そうです。軍隊教育だから。テストでも失敗したら許されない。
でも自分勝手はダメですよね。「みんなの意見を合わせる」っていうのも大事。
みんなの意見を合わせるっていうのは、「妥協してまわりの意見に流される」ことではなく「意見をみんなでつくる」っていうこと。
日本の学校じゃ難しいですね。たとえばクラスのみんなが「答えは右です」って言ってる中で「僕は絶対左だと思います」って、なかなか言えない。
私は結構それやってましたけど。
そうなんですか!
「泉、しゃべるな」ってよく言われてました。「授業妨害」だって。
え?先生が授業妨害だって言うんですか?
はい。
でも先生が間違えることもあるじゃないですか。
めちゃくちゃ間違えてましたよ。
それを指摘してたんですか?
めっちゃ指摘してました。
それで京大に行ける頭を持ってるわけだから、先生は扱いにくかったでしょうね。
はい。かなり面倒くさい、嫌な子どもでした。