変と不変の取説 第48回「ギフテッドと日本の未来」

8「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第48回「ギフテッドと日本の未来」

前回、第47回は「ドローン・テロの脅威」

安田

「ギフテッド」ってご存知ですか?

映画でありましたよね。

安田

そうなんですか?ギフトは英語で「才能」っていう意味なんですけど。欧米では「ギフテッド」は「与えられし人」。

日本でいうと天が与えし「天賦の才」ですね。

安田

欧米ではギフテッドは「特殊な才能を持つ人」。だから、ギフテッドだけを集めてその能力を伸ばす教育をするそうです。

そうですね。

安田

でも日本の場合、そういう特殊な人たちは「バランスが悪い人」みたいなに見られて、授業についていけない「ダメな人チーム」に入れられちゃう。

特別支援学級ですね。

安田

扱いに差がありすぎですよ。かたや「特殊な才能」という扱いで一方では病気扱い。

「特別な支援が必要な子」という意味ですからね。特別支援学級は。

安田

そうですよね。才能がある人というよりも、支援が必要な人たちという扱い。

ですね。

安田

ものすごく音楽に才能があったとしても、ちゃんとしたコミュニケーションができることのほうが大事。できない部分をまず埋めようとする。

その通りですね。

安田

それは日本の伝統なんですか。それとも昔はそうでもなかった?

昔はギフテッドという扱いだったと思います。たとえば、その子がめちゃくちゃ手先が器用だったら、それ伸ばそうとした。

安田

そうですよね。昔はそういう画家とかいましたよね。

たくさんいました。

安田

じゃあ最近のことなんですか。こうやって“できない”部類に入れられちゃうのって。

もともと“天賦の才教育”だったのが“標準化教育”になったんですよ。

安田

それは戦後の話ですか?

明治ぐらいからですね。標準的な軍人をつくることが必要になったので。

安田

軍隊をつくることが目的だったと。

あとは「富国強兵」で産業に携わる人を標準的に働かすため。9時5時で同じ作業を毎日ずっとやり続ける、みたいな。

安田

でも今や時代は変わって、他国の教育環境とかも変わってきてるじゃないですか。

文科省官僚もそれは分かってるんです。

安田

ギフテッドの能力をさらに伸ばすことが、社会にとって有益だと分かってる?

分かってますね。

安田

じゃあ何でやらないんですか?ギフテッドって日本にもたくさんいると思うんですけど。

いっぱいいますよ。日本にも。

安田

ですよね。でも物心ついた時には「ああ俺はダメなやつなんだ」って教えられるじゃないですか。

そうですね。

安田

それって本人も嬉しくないし、まったく国益にもかなってないじゃないですか。なんで国益のためにその子の能力を伸ばさないんですか。

教育基本法をつくったのはGHQなので。

安田

でもアメリカでは飛び級とかは普通ですよ。

日本には「特別な才能を持ったリーダー」は出て来て欲しくないから。「従順なる標準化された民族になれ」ってことでしょ。

安田

じゃあアメリカの思惑通りだと。

そうだと思います。アメリカは自国と占領国では別の教育をするんですよ。

安田

まあ植民地ですもんね。

日本の場合は占領した国でも、日本と同じ水準の教育をやってましたけどね。

安田

え!そうなんですか。

はい。それで優秀な人材をどんどん日本に呼んで、重要な役職にもどんどん付けて。

安田

欧米列強はやらなかったんですか。

日本だけですよ。植民地にしてた国にも学校つくって、インフラつくって、教育して、みたいな。

安田

それにしては、えらく恨まれてますけど。

まあ国によりますけど。

安田

確かに台湾とかはそうでもないですもんね。

はい。

安田

じゃあ今後は日本の教育も変わりますか?これまでは標準化が正しくて、変わったことをやると「協調性がない」「自分勝手だ」って言われて来ましたけど。

いや。そう簡単には変わらないでしょうね。

安田

それはどうして?

前にも言いましたけど、日本の組織ってゴーストというか空気みたいなものが支配してるんですよ。

安田

空気?

大企業も「変わったほうがいい」ってみんな頭ではわかってるのに、変われないんですよ。完全に空気に支配されてます。

安田

空気に弱いんですか?日本人っていうのは。

弱いですね。空気にのまれてる感じ。

安田

どうやったら変えられるんですか?空気を。

空気を自分でつくるしかないです。

安田

空気をつくる?

はい。本来はできるはずなんですよ。でも現代人は「気を練ったり」「空気をつくる」というトレーニングがされてないし、そういう経験も少ない。

安田

頭がいい人はいっぱいいるはずなんですけど。

たとえば優秀な頭がいい人も「文科省の空気」とかに流されてしまうんです。だから陰では言えても表だっては言えないんですよ。

安田

そういう人しか出世できないんでしょうね。

表だって言っちゃうような人は無理ですね。

安田

前に「不登校が増えてる」っていう話をしたじゃないですか。

はい。

安田

ギフテッドって、標準化されるのが嫌で学校に行かなくなるんじゃないですか。

それが自然な流れでしょうね。

安田

じゃあ、ある意味いいことですよね。不登校が増えるのは。

私は健全だと思ってます。

安田

不登校の人の中から、この国を変える人が出てくるかもしれないですね。

彼らをちゃんとギフテッド教育して、そういう場つくってあげればどんどん出てくる。

安田

持って生まれた「その人の偏り」を偏ったまま伸ばすってことが大事ですよね。

偏ったままで伸ばしていくことと、偏った人たちを大切にできる関係性をつくること。

安田

関係性ですか。

放っておくとムカつくから。

安田
ムカつく?
標準化でみんな自分を抑圧するから不満がたまる。だから変人が普通にいるとムカつくんですよ。「俺はこんなに我慢してんのに、なんでおまえ変人でおれんねん」って。
安田
じゃあ彼らが変だからいじめてるわけではない?
嫉妬するからいじめるんですよ。

 


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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