このコラムについて
世の中の情報は99%が「現在」または「過去」のものでしょう。たった1%の未来情報をつかめる人だけが、自分のキャリアやビジネスを輝かせるのです。でも、未来情報なんか手に入らないよ!と思ったアナタ。ご安心を。もしアナタが古い体質の会社に勤めているなら超ラッキー。そんな会社の経営者ならビジネスがハネるかも。
未来コンパスが、あなたの知らない未来を指し示します。
ー 第89回 「Brex」
何年か前の話です。個人事業主としてビジネス用のクレジットカードを申請し、見事に落ちました。
開業と同時に申請したので事業実績ゼロ、ホームページも無し。いま思い返すと、そら落ちるよなぁという感じです。カード会社からすると、売上の見込みも会社の実態も分からないですからね。
さて、どんな事業も始めるときは資金不足かつリソース不足なもの。資金繰りや管理コストの観点からクレジットカードは有難いツールですが、上記のように開業直後ほど申請が通らないのが実情です。
そんな課題を解決したサービスがこちら。アメリカでスタートアップ向けのクレカを発行しているBrexです。
米国出願番号(Serial number):90133727号
出願人: Brex Inc.
【商標】
【指定商品/指定役務】(抄訳)
クレジットカードやデビットカードなどの磁気コード化されたカード、クレジットカードやデビットカードなどの発行、支払取引の承認及び経費管理のためのオンライン経費管理ツールの提供 等
Brex創業者は、スタートアップ仲間が保証人なしでカードを作れない問題を目の当たりにし、このサービスを立ち上げました。
特徴的なのは信用力の精査の仕方。
既存のカード会社は、過去の支払履歴(クレジットスコア)に基づいて審査をしますが、Brexは企業の口座残高を確認し、その10%を限度額に設定するという与信管理をしています。また、ベンチャーキャピタルといった投資のプロから資金を調達しているかを確認し、信用力に反映しています。10万ドル以上調達しているスタートアップに限定してサービスを提供することもありました。
支払履歴のチェックを必要としないことで、即日でサービスの利用が可能となり、実物のカードも3日程度で届きます。リスクを一定範囲に抑えつつ、スピーディーにサービスを提供します。
未来コンパスが指すミライ
さて、Brexと言う名前、社名に秘められたストーリーがあるのかと思いきや「響きのよい4文字のドメインが安く売られていた」のが理由とのこと。
早い者勝ちの知財実務が染みついている私は、他社にネーミングやドメインが取られていると、代替案を考えてもらうようにクライアントを促してしまいます。
日本では、ドメインを含む知財の取引やオークションは低調ですが、Brexが世界的に普及するころには、このエピソードが広まって、こういった無体財産の取引が活況になるのでしょうか。
この記事を書いた人
八重田 貴司(やえだ たかし)
外資系企業/法務・知財管掌。弁理士。
会社での業務とは別に、中小・ベンチャー企業への知財サポートをライフワークとする。クライアント企業が気づいていない知的財産を最大化させ、上場時の株価を上げたり、高値で会社売却M&Aをしたりと言った”知財を使って会社を跳ねさせること”を目指す。
仕事としても個人としても新しいビジネスに興味があり、尖ったビジネスモデルを見聞きするのが好き。
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