「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。
第46回 「雑談」で増収増益を実現する
いえ、実は違うんです。ウチが完全週休二日制にしたのはコロナ禍がきっかけで。ちなみにその時に営業時間も変えたんです。朝を1時間遅く、夜を1時間早くして、1日9時間営業にしました。
ふーむ。つまり営業時間を2時間も短くしたってことですか? それで売上は大丈夫なんでしょうか。
ええ。なんならコロナ前よりも今の方が良かったりします(笑)。
へぇ〜。普通は営業時間を減らしたら売上は落ちると思うんですけど。
いろいろな要因があるとは思いますが、チケット制度の導入が一番大きかったですね。それにより時間単価が大幅にアップしたんです。
なるほど。具体的にはどれくらいアップしたんです?
例えばカット5000円、パーマ1万2000円という値段設定だったとすると、だいたい1時間あたり5〜6000円の売上になるんですね。だから単純に10時間営業すると、1日の売上高は5万円。で、営業時間を2時間短縮すると1万円のロスになりますよね。
そうでしょう? さらにチケットを購入したら割引が効いちゃうわけで、一回あたりの単価はさらに下がっちゃうじゃないですか。
普通に考えたらそうなんですけど、チケット制にしたことでオプションの依頼がグッと伸びたんです。ハウオリだけじゃなく、水素水を使ったりヘッドサウナを受けたりトリートメントをされたりすることで、合計金額がかなり上がりまして。
ああ、なるほど。一度の施術で何枚もチケットを使ってくれるってことですか。確かに回数券が手元にあると、何枚も気軽に使えちゃいますもんね。
まさに仰るとおりで。ハウオリ自体もそこまで時間がかかるものではないし、短い時間でいろいろな施術を担当できるんですよね。結果1時間で5000円だった平均単価が、1万円、1万5000円、2万円…と上がっていって。
すごいなぁ。ちなみに、カットやパーマ自体の価格を上げていく美容師さんもいるじゃないですか。この人に切ってもらうなら3万円、みたいな。
いらっしゃいますね。個人にすごくブランド力がある方で、「この人に切ってもらいたい!」と思える方なら成り立つと思います。ただこのやり方って、当然ながら属人性がものすごく高いわけですよ。
確かに確かに。「その人にしかできない」からこそ成り立つわけですもんね。誰にでも真似できるやり方ではない。
仰るとおりです。結果、1人分の利益がアップするだけで、美容院全体の収益が伸びていくわけではないんですよ。
ふ〜む、それもそうですね。逆に言えば、「誰でも担当できるメニュー」で売上アップをするとなると、別の方法が必要になってくると。
それで考えたのがチケット制度でして。以前もお話しましたが、ウチのチケットはいろんなメニューに使えるんです。ハウオリならチケット1枚、ヘッドサウナだったら2枚、というように。お客さんの好みや要望に合わせて組み合わせられて便利だし、ウチとしてはどんどん単価アップが実現できるので、まさにWin-Winの仕組みで。
いやぁ素晴らしい制度ですよね。それによって、営業時間を2時間減らしたのにも関わらず売上はむしろ伸びたと。ちなみに現場に立っていて、コロナ禍を経てお客さんのニーズって変わった感じはしますか?
それは感じましたね。コロナという先行き不透明な事が起こって、お客様も「私の人生、このままでいいのかな」「もっと自分の人生を考えなきゃ」と思うようになった感じがします。それで髪のお悩みも含めたライフスタイル全てについて相談したい、誰かに話しを聞いてもらいたいと思う方が増えたんじゃないかな。
なるほどなるほど。でもぶっちゃけた話、相談に乗っているだけじゃ売上にならないじゃないですか。お店としてはできるだけ短くパッパと回転させたいんじゃないですか?
うーん、そういう側面もゼロだとは言いませんが、やっぱり僕らの仕事はお客さんにハッピ―になってもらうことなので。だからその要望に応えようとできる限りじっくりコミュニケーションするようになったんですが、なぜかどんどん売上が上がっていく(笑)。
えー、なんでですか(笑)。
ふ〜む、なるほど…。不思議と言えば不思議ですが、納得感がある話でもありますね。コミュニケーションを何より重視する岩上さんの本質に触れる話というか。
そうですね。売上って「施術」じゃなくて、むしろ「相談の時間」で決まるのかもしれません。そういうことを多くの美容師さんに伝えていければと思っています。
対談している二人
岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表
美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。