第5回「安物買いの銭失い」
お医者さん
ああ、また電子カルテの変更の時期か…。まったく、毎度面倒くさいな。それに、何社かデモを確認したが、どれも似たりよったりでよくわからん。
お医者さん
まあ、機能に大差がないなら、一番安い所にしておけばいいだろう。
ちょっと待ってください!その選び方は危険ですよ。
絹川
お医者さん
……また君か。なんだっけ、ドクターなんとか。
ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしています。
絹川
お医者さん
ああ、そうだったな。で、一体何が危険だと言うんだ?
電子カルテの選び方です。機能に大差がないなら、一番安いのを選べばいいと仰ってましたよね。
絹川
お医者さん
そうだ。これまでいろいろなメーカーの電カルを使ってきたが、中身はだいたい同じじゃないか。だったら値段が安い方がいい。そんなの当たり前のことじゃないか。
そうやって選んだ結果、後悔することになった病院をたくさん知っています。
絹川
お医者さん
一体なんだと言うんだ。そういう君ならどうするのかね?
一番高いものを選びますね。
絹川
お医者さん
は?
先生、確かに電カルの基本的な機能はどこも同じです。でも、考えてみてください。機能が同じなのに、なぜ金額の差があるんでしょう?
絹川
お医者さん
え? そりゃあ各社が自分たちで値段を決めてるからだろ?
もちろんそうなんですが、金額が高いのにも安いのにも、根拠はあるんです。
絹川
お医者さん
根拠…
先生、電カル=システムの購入費、だと考えていませんか?
絹川
お医者さん
考えてるよ。実際そうじゃないか。
そこが盲点なんです。実際のところ、電カルは買っただけでは動きません。そこには必ず「導入作業」というフェーズがある。そして各社の値段の差は、この導入作業をどれだけメーカー側がやってくれるか、というところに結構左右されているんです。
絹川
ちょっと提案書を見せてください。…ああ、ほら、一番安いところは、導入作業に関するサポートはほとんどついていません。これだと院内でかなりの作業コストがかかるでしょうね。
絹川
一方で一番高い方は…ほらほら、こんなに手厚いサポートがついている。これならかなりの部分を外注できるので、院内の作業コストはほとんどかかりません。
絹川
お医者さん
なるほど…つまり安い方は「安物買いの銭失い」になり得るということか。
その通りです。もちろん、高い所が常に手厚いサポートを含んでいるとは限りません。金額の高低ではなく、「パッケージ内容と金額の整合性を見て決める」というのが大切なことなんです。
絹川
医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。
著者:ドクターアバター 絹川 裕康
株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。