「昔ながらの病院」をどうシステム化する?〜お医者さんは、なやんでる。 第109回〜

第109回 「「昔ながらの病院」をどうシステム化する?」

お医者さん
お医者さん
さてさて、ウチの病院もやっとシステム化の方針が決まったぞ。ともあれ、何をどこまでシステム化するか考えないとな。
お医者さん
お医者さん
なんだかんだ「昔ながらの病院」というスタイルが支持されているようだし、なんでもかんでもシステム化するってのはちょっとな…。
仰るとおり、患者さんたちはあまりシステム化を望んでいないように見えますね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうなんだよねえ。祖父の時代から続いている病院だからさ、治療っていうよりコミュニケーション目的に来てる人もいるくらいで(笑)……って、あなた一体どなたです?
はじめまして。ドクターアバターの絹川といいます。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
へえ、そんなお仕事があるんですね。じゃあ、ウチみたいな「これからシステム化を進めていこう」って病院の相談にも乗ってくれるの?
もちろんです! というより、実は私自身が病院のシステム化、電子カルテ導入が専門でして。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
へえ! それならなおさら意見を聞いておきたいところだなあ。実際、ウチみたいにあまりシステム化に向いてなさそうな病院の場合、どういう設計にしたらいいと思う?
そうですね。一番シンプルな方向性としては、「患者さんから見えるか、見えないか」じゃないですかね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
うん? どういうこと?
患者さんから見えるところ、つまり受付とか診察とか、患者さんとダイレクトにやりとりする部分は今まで通りのオペレーションで、見えないところ、いわゆるバックヤードで行う事務的な作業は徹底的にシステム化する。そういう方向性です。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ああ〜なるほど、わかりやすい。
そういう形でのシステム化であれば、患者さんからは今まで通りの「昔ながらの病院」のままに見えます。一方で、バックヤードでは効率化が進み、生産性も高まっていく。業務に余裕ができれば患者さんに対するホスピタリティもよくなっていくでしょうし、まさに双方ウィンウィンですね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
なるほどねえ。そういうことも可能な時代になったってことか。めちゃくちゃIT化された古民家カフェ、みたいな。
ああ、まさにそういう感じです(笑)。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
でも、具体的にはどんな風に設計していけばいんだろう。
そうですね。まずは全業務を棚卸ししてみることじゃないでしょうか。そして各業務を「患者さんに見える業務」と「見えない業務」にわけてみる。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ああ、なるほど。でもなんとなくそういう場合、「定型業務」と「非定型業務」でわけるようなイメージだったけど…
それもアリですが、実は患者さんに見える部分にも定型業務は存在するんですよね。例えば精算がそうです。自動精算機を入れてシステム化することはできるけれど、スタッフが直接「最近どうですか?」「お大事にしてください」と声をかけた方が満足度は高そうじゃないですか?
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
なるほどなるほど、確かにそうだね。馴染みのスタッフと話したい患者さんもいるもんなあ。
ですよね。もっとも、ホスピタリティには個人差がありますから、接客が苦手なスタッフさんが多い場合は、むしろ自動精算機を入れた方が満足度が上がるかもしれない。ケースバイケースで変わってくるってことですね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ふむふむ。「病院のシステム」と一言で言っても、いろんな設計ができるってことなんだね。
さらに言えば、システムは導入して終わり、ではありません。むしろ運用開始後、コツコツとチェックを続けてチューニングしていくということが何より重要なんですよね。入れっぱなしで放置しておくと、患者さんやスタッフの満足度が低いまま固定されてしまったりするので。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
確かにそうだね! 長い目で見た運用が大切ということか。つまり最初の設計時点から「時間」の概念を持って臨まなければならないという。
まさにそういうことです!
絹川
絹川

医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。


著者:ドクターアバター 絹川 裕康

株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。

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