第124回 「小さな変更で大きな効果を出すシステム」
お医者さん
まったく……どうしてこうもトラブルが続くんだ。こっちを解決したらあっちでトラブル、あっちを解決したらこっちでトラブル。まるでモグラ叩きをしている気分だ。
笑。モグラ叩きとは、言い得て妙ですね。
絹川
お医者さん
だってそうだろう。問題が多すぎてあっちへこっちへ。いい加減疲れたよ。……って、ああ、あなたはこのあいだの。
ご無沙汰してます。ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
お医者さん
ああ、そうそう。ドクターアバターの絹川さんだ。いや、恥ずかしいぼやきを聞かれてしまったな。
いえいえ、よくわかります。診察だけに集中できればいいんですけど、個人クリニックだとそうもいきませんよね。
絹川
お医者さん
まさにそうなんだよ。大きな病院なら「関係ないや」ですませられるのかもしれないが、うちみたいな小さなところは、患者の満足度低下がダイレクトに売上に響くからね。
そうですよね。ちなみにどんなトラブルが多いんですか?
絹川
お医者さん
いやいや、一つ一つはよくある話だよ。待ち時間が長くなっちゃうとかスタッフの連携ミスとか。……今はとにかく人手不足でさ。外来がバタついているから抜け漏れやすれ違いが多くなっちゃうんだよね。
なるほど。患者さんが減って困っている病院が多い中、先生のところは盛況ですもんね。
絹川
お医者さん
まあ、そういう考え方もできるけどさ。でもやっぱり患者さんに迷惑はかけたくないし、早く新しいスタッフを見つけないと。
そうですね。確かに先生のクリニックで起こっている「ミスの連鎖」は、人手不足に原因がありそうです。とはいえ、必ずしも人を増やさなくても、改善できる方法はあると思いますよ。
絹川
お医者さん
お、そうなの? 例えばどんな?
ポピュラーなところで言えば予約システムの導入などですが、当日駆け込みができなくなって、結果患者さんが減ってしまうこともあり得ます。
絹川
お医者さん
うん、そんな気がするな。じゃあどうするの?
私が見る限り、受付の流れをシステム化するのがいいように思います。
絹川
現状は、①患者さんから診察券を受け取る②呼び込みの順番を人間がコントロールする③診察後に患者さんに診察券を返却する、という流れです。たとえばこれを、来院時に診察券のバーコードをスキャンする形に変える。それでシステムに受付登録され、呼び出しも自動で行い、診察券の返却作業もいらなくなります。
絹川
お医者さん
ふむふむ。つまり受付スタッフの仕事が効率化されると。
そういうことです。今までより余裕ができるので、院内の流れがスムーズになり、ケアレスミスも少なくなるでしょう。受付や順番管理だけでなく、たとえば最近は「WEB問診票」も浸透し始めています。こういったものを上手に使うことで、クリニック全体のキャパシティが上がっていく。
絹川
お医者さん
なるほど、今の人数でできることが増えていくわけだ。結果、人を増やさなくても対応できるようになると。
仰る通りです!システムを変える場合は、問題となっている場所を単体で見るのではなく、院全体の流れで見る必要があります。逆に言えば、そういう視点で見ることができれば、小さな変更で大きな効果を出すことも可能ということです。
絹川
お医者さん
おもしろいね!ちょっと視野が広がったよ、ありがとう!
医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。
著者:ドクターアバター 絹川 裕康
株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。