第25回 「医は仁術?それとも算術?」
お医者さん
今日のあの患者さん、数値が随分改善したって喜んでいたな。人の命を助けたくて医者になったのだから、あんなふうに感謝されると嬉しいものだ。
お医者さん
…しかし、最近は売上がかなり悪くなってきている。本来なら儲け度外視でも患者さんに寄り添うべきなんだろうが、お金がなければできることも限られてくる。悩ましいところだ。
「医は仁術なり」という言葉もあるように、日本にはまだ「医者は儲けてはいけない」というイメージがありますよね。
絹川
お医者さん
確かにそうだな。むしろ私の中にも「医者は利益を追い求め過ぎてはいけない」という感覚がある。…って、君は一体誰だ?
ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしています。
絹川
先生はご自身でクリニックを開く前は、大病院にお勤めだったと聞きました。なぜ辞められたんです?
絹川
お医者さん
よく知っているな。確かに某有名総合病院の勤務医だった。だが、院内の派閥争いに嫌気が差してね。
なるほど。医者の数が多いと、どうしても「政治」が発生しますよね。
絹川
お医者さん
ああ。金と出世のことばかりで、どうも患者さんに向き合っていないように思えてね。それで自分でクリニックを開くことにしたんだよ。
なるほど。まさに「医は仁術なり」というお気持ちがあったわけですね。確かに先生のクリニックは患者さんからの評価も高い。
絹川
お医者さん
それは嬉しいことだ。しかし商売は苦手でね。売上はなかなか上がらないし、むしろ下がっている。私には「仁術」より「算術」が必要なんだろう。
なるほど、それで今後どうしようか悩んでらっしゃるわけですね。やはり経営者になるとお金のことは無視できませんからね。
絹川
お医者さん
勤務医時代は、設備もいいものが使えていたし、看護師も十分な数が揃っていた。今思えば恵まれた環境だったのだろうな。まったく、どうすればいいのやら。
「経営計画書」を作成してみるのはどうでしょう?
絹川
お医者さん
経営計画書? このような小さなクリニックに、そんな大層なものが必要かね。
そうですね。私が考えるに、現状の課題は「想い」と「数値」がリンクしていないことにあります。
絹川
お医者さん
想いと、数値?
そうです。今は医は仁術なりという「想い」と、売上という「数値」が、別々に存在してしまっているんです。経営計画書を作ってこれらをしっかりリンクさせ、ビジョンを可視化すること。まずはそこから始めるのがよいのではないかと。
絹川
お医者さん
なるほど。確かに普段、「医者としての私」と「経営者としての私」を使い分けているような気がしていた。考え方も優先順位も違う、別の人格として。
それを1つに融合させるための一つの方法が、経営計画書というわけです。
絹川
お医者さん
そうか。うん、少し興味が出てきたよ。しかし経営計画書なんて、どう作ればいいんだ?
病院ではあまり聞かないかもしれませんが、一般企業では経営計画書を作るのが当たり前です。書籍などもたくさん出ていますから、まずは読みやすそうなものを何冊か選んでみるのがいいでしょう。
絹川
お医者さん
よし、次の休診日にさっそく本屋に出かけてみるよ。
ぜひぜひ!
絹川
お医者さん
もし本を読んでわからないところがあったら相談してもいいかな。
もちろんです。お気軽にお声がけください!
絹川
医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。
著者:ドクターアバター 絹川 裕康
株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。