第33回 わび和さび -社長峠のことわざ

この記事について
半世紀も生きてきますと、【ことわざ】の持つ意味が、より深く染みるようになりました。昔の人はうまいこと言ったもんだなぁと、しみじみ。時代の転換期、大きく世の中が変わってゆく中でも、人やこの世の本質的な部分は、案外変わらなかったりします。結構スルドイところを突いてくるのです。

本日のことわざ
「雲烟過眼」

タカコ

昨日、無事最終契約を交わしまして。

ほひほひ

ほひ?

タカコ

あたくし現職から退任となりました。

ほひほひ

あら

タカコ

会社売却しました。

ほひほひ

あらまあ

タカコ

荷をおろしたでざんず。

ほひほひ

オツカレサマー

タカコ

軽くなってスッキリ!と思いきや、なんか意外と物悲しい、、。会社で色々あっても寝られないということはなかったのだけども、ここんとこ不眠気味で。いまも眠いよ、なんでだろ。

ほひほひ

まあ、そんなこともあるさね。

タカコ

最善の選択だったと思うのよ、M&Aのお相手。社員が知ったらみんな喜ぶような、業界で知らない人はいない会社なので。経営はぐっと安定するし、本当によかった。

ほひほひ

おめでとうございます☆

タカコ

以前は「会社買いませんか?」の話が時々きていたのだけど、ここ3年くらいは「会社売却してください」というM&Aの話が多くて。

ほひほひ

たしかに最近は増えてる。中小規模の案件が多くなっているから、取引総額はそんなに伸びていなくても、件数自体は多くなっているんだよね。

タカコ

一昨年くらいまでは「冗談じゃない」って断っていたんだ。がんになったくらいでは辞める気なかったしさ。ただ、

ほひほひ

タカコ

去年の5月に入院して、ちょっと考えないといけないのかも、、、って思い始めた。
その後も会社に復帰しようとすると足を骨折したりさ。なんか、いい加減そっちじゃないって言われてる気がして、さすがにね。

ほひほひ

右足に続いて左足も骨折してたもんな!ばかばかしい理由でwww

タカコ

それで、今年も2月に入院したでしょ。もうこりゃだめだって。毎回ちがう病気で入院するまでひどくなっちゃうんだ。しかもどれも完治してないし。

ほひほひ

そりゃ、会社に迷惑かかるよな。

タカコ

自分の頑張りたい!って気持ちだけでは、どうも無理なんだなって。みんなに迷惑かけ続けるのが心苦しくて。その間も、M&Aのハナシは次々と来るわけ。

ほひほひ

そりゃ、考えるわな~。

タカコ

それで連絡のあった中で、上場している大手仲介会社3社から話を聞くことにした。情報収集だけでもと思って。

ほひほひ

フムフム

タカコ

M&Aと一口にいっても、本当に色々あるんだってわかった。要は売り手と買い手のニーズに合わせて、マッチングするかどうかという感じ。だから色んなカタチがあるよ。

ほひほひ

で、ますは情報収集したって訳だ。

タカコ

色々なM&Aの事例をきいてみて、意外だったのが

ほひほひ

ほう?

タカコ

一番高く買ってくれる会社や、一番大きな規模の会社に売却するとは限らないってことなんだ。

ほひほひ

へえ~

タカコ

やっぱり、従業員やお客様のこと考えて、いちばん良いと判断したところに売却するみたいだよ、売主側の社長さん。

ほひほひ

お金じゃないんだ

タカコ

そりゃそうだよ~自分の子供みたいなもんだから!一緒になったらいちばんしあわせになってくれそうなところにお引き受けいただきたい。

ほひほひ

花嫁の親みたいなこと言ってるwww

タカコ

創業者の場合は特にその気持ちが強くなるんじゃないかな。だってほんとさ、ゼロから立ち上げて形にするのって、ほんっと大変だから!!その分、愛着も思い入れも人一倍強くなる、、、(´;ω;`)ウゥゥ

ほひほひ

あ、泣いた

タカコ

夕べ仲のいい女性起業家さん達と集まったので、この話したら「おめでとう」って「いいなあ」言ってもらえて。やっぱりEXITとしては良いと思うんだよ。でもいざとなると「肩の荷がおりた~やった~!」って、山の頂上で叫んでやろうと思っていたのにさ、、、なんか、そういう気分になれない自分がいる。

ほひほひ

ま、しばらくは仕方ないんじゃないか。よいお相手先だから決めたんでしょ。

タカコ

そうなのよ!お話がある中で、次から次へと企業買収して海外にいくつも支店がある上場会社もあったのだけど、でもなんか違うなって思って。そのときわかったよ、必ずしも高い金額で買ってくれるところに売却するわけでもないっていう事が。

ほひほひ

あ~最初わからなかったことも、M&A具体的にすすめていってわかったんだな☆

タカコ

うんそう。やっぱりお互いの条件を出して進んでいって、トップ面談で実際に会ってお話して、そこでの感覚というか相性というか、、その辺ってやっぱり理屈じゃないんだよね。根本的な価値観が合うかどうかって、そこでわかる。

ほひほひ

そこが山場かな。

タカコ

そうかもね。やっぱり会社の売買っていってもさ、最後は「人と人」なんだって思う。だから今回、お相手のネームバリューもさることながら、この社長さんと役員の方々だったら大丈夫だって。あと、うちの会社の事を本当によく考えてくれていて、ありがたいなって思った。従業員も顧問の方々も今の契約のまますべて存続OK!

ほひほひ

よかったな☆

タカコ

やっぱり、最後は経営者同士の相性って大きいって言ってた。どのM&A仲介会社のひとも。

ほひほひ

じゃ、めでたく退任ということで。

タカコ

本当は、お相手からもそのまま会社に残ってほしいと言われたのよ。でもお断りした。顧問の先生方からも、せっかくここまでにしたのにもったいないとも言われたのよ。
長年一緒にやってきた方々から言われると、ちょっとぐらつきもしたけど、でも決意は変わらなかった。会社から私だけが抜けて、新しい代表取締役と入れ替わるだけ。

ほひほひ

今日はこのことわざがピッタリなんじゃない?
【雲烟過眼】うんえんかがん-雲やかすみが過ぎ去って留まっていない様に物事に執着しないというたとえ。

タカコ

そうだね、いくら思い入れがあるって言ってもさ、もう決めたのだから喜んでスパっと卒業だ!雲烟過眼の境地で御座います!

ほひほひ

そうそう、その意気☆

 

 

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著者について

 

黒須 貴子(くろす たかこ)
https://tempurayama.com/

数々のアルバイトや専業主婦などを経て、消防設備の会社を設立。下請けからの脱却、女性消防設備士の登用など、難題に直面してきた経験をシェアして生かせる〈社長峠の茶屋〉を始める。学生時代はパンクロッカー、現在はヴィジュアル系のキャンサーサバイバー。

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