第59回 「脳」は敵か、味方か?

この対談について

健康人生塾の塾長にしてホリスティックニュートリション(総括的栄養学)研究家の久保さんと、「健康とは何か」を深堀りしていく対談企画。「健康と不健康は何が違うのか」「人間は不健康では幸せになれないのか」など、様々な角度から「健康」を考えます。

第59回 「脳」は敵か、味方か?

安田
これまでの対談で久保さんとはいろいろなテーマでお話しをしてきました。その中で時々思うのが「脳って意外と間違った判断をするんだな」ということで。例えば「砂糖」の話、あれは衝撃でしたよ。

久保
あぁ、砂糖を摂取すると脳が「気持ちいい」と勘違いしてしまう、だから中毒性があるんです、とお話ししましたね。
安田
そうですそうです。本当はカラダに悪いのに、脳が間違った判断……言わば「小細工」をしているわけじゃないですか。だから私は「もしかして脳は、カラダの一部ではあるけれども、実は敵なのかもしれないぞ…」と疑い始めているんですよ。

久保
うーん、脳が敵か味方か…難しいテーマですね(笑)。そもそも「生物」として存在するだけであれば、たぶん脳は必要ないんですよ。
安田
え、そうなんですか?

久保
だって単細胞生物には脳はありませんけど、ちゃんと「生きて」いるじゃないですか。そういう意味では、以前安田さんとも意見が一致しましたけど、私はやはり「脳」はある種の「アンテナ」なんだと思いますね。
安田
ああ、「脳はクラウドみたいなところにある情報を落とし込む受信機なんじゃないか」って話、しましたね。それならばなおのこと、受信した情報を正しく伝えてもらわないと困るんですけど。

久保
そうですね(笑)。でも一旦「脳の立場」になって考えてみると印象が変わるかもしれませんよ。
安田
え、「脳の立場」ですか?

久保
はい(笑)。脳が伝えてくる情報は、曖昧だったりいい加減だったりする。そこに関しては私も全く同感です。でも、膨大な情報が送られてくる中で、脳も取捨選択を迫られていると思うんですよ。
安田
ふーむ、まぁ、確かにとんでもない量の情報でしょうからね。すべて細かくチェックするわけにはいかないか。

久保
そうそう。脳の情報処理能力にも限界はあるはずなんです。だから悪意からというより、キャパシティ的に仕方なく端折っている部分も多いと思うんですね。これは体の構造的な問題でもあると思うんですけど。
安田
ん? どういうことですか?

久保
例えば「目」には「見る機能」が備わっていますが「何を見ているか判断する機能」はないですよね?
安田
ああ、目から入ってきた光は、視神経を通じて脳に伝達されるから「見えている」と認識できるんですよね。つまり「目」自体が情報を処理しているわけではないと。

久保
仰るとおりです。つまり最初はまず、脳の中にあらゆる情報が「曖昧なまま」取り込まれる。で、脳が「こんな風に見えているんだな」と解釈してくれることで、私たちは初めて「見る」ことができる。
安田
なるほどなるほど。そう言われると、脳は大変ですね。すごく雑に丸投げされているというか(笑)。

久保
そうそう(笑)。しかも目だけじゃなく、全身のいろいろな感覚器官から丸投げされている。これは大変ですよ(笑)。
安田
ははぁ、確かに。ちょっと脳がかわいそうになってきました(笑)。

久保
そうでしょう?(笑) そう考えると、脳がすべての情報に対して正確でいることは結構難しい。むしろその中から優先的なものを選び取ってリソースを配分する、ということこそが役割だとも言えるわけで。
安田
なるほどなぁ。そういう意味では、脳は「今」という短期的なジャッジをするのに優れた器官なのかもしれませんね。

久保
ああ、なるほど。逆に言えば、長期的なジャッジは苦手だと。
安田
そうそう。例えば「熱い」「痛い」といった危険な情報に対しては、脳は瞬時に「離れろ」っていう信号を出せるじゃないですか。でも冒頭でも言っていた砂糖。これは食べ過ぎたらカラダに悪いのに、「もうそれ以上食べちゃダメ」って信号は出さない。これはそれが短期的な脅威じゃないからかなと。

久保
ああ、なるほど。確かにいま多少砂糖を食べたからといって、別にすぐ死ぬわけじゃないですもんね。
安田
そういうことです。おそらく脳が下す「短期的な判断」は、概ね合っているんですよ。でも5年後、10年後を見据えた「中長期的な判断」を下すのは苦手なんじゃないですかね。

久保
ははぁ、なるほどおもしろい。ということは「短期的な判断に関しては、脳は味方。中長期的な判断は、もしかすると敵になってしまうかも?」という結論になりそうです(笑)。
安田
きっとそうですね(笑)。脳を過信しすぎないというのも、脳とうまくやっていくコツなのかもしれませんね。

 


対談している二人

久保 光弘(くぼ みつひろ)
健康人生塾 塾長/ホリスティックニュートリション研究家

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仙台出身、神奈川大学卒。すかいらーくグループ藍屋入社後、ファンケルへ。約20年サプリメントの営業として勤務後、2013年独立し「健康人生塾」立ち上げ。食をテーマにした「健康人生アドバイザー」としての活動を開始。JHNA認定講師・JHNA認定ストレスニュートリショニスト。ら・べるびい予防医学研究所・ミネラル検査パートナー。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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