第111回 ブームの終焉から学ぶ、高級食パンの未来予測

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第111回 ブームの終焉から学ぶ、高級食パンの未来予測

安田

今日は以前一世を風靡した「高級食パン」についてお話を聞いてみたいなと。一時期は店も大量にできていて、毎日行列が絶えませんでしたよね。でもブームはあっという間に過ぎ去って、多くの店が閉店に追い込まれた。


倉橋

僕もあのブームはすごく興味深く見ていましたね。元祖と言われる「乃が美」さんをはじめ、各社すごいなと。

安田

そういう高級食パンがまた最近復活してきてるらしくて。もちろんそのままでは難しいので、食パンだけじゃなくスイーツも販売したり、サンドイッチを作ったり。カフェを併設しているところもあるらしいです。


倉橋

へぇ、なるほど。もともとは完全にギフト需要を狙った商品でしたよね。包装紙もこだわっていて。「パンをギフトにする」という新しい文化を定着させた功績は大きいと思います。

安田

確かに。1000円くらいで、珍しくて、喜んでもらえるなら、手土産としては非常にコスパがよかったんですよね。


倉橋

そうなんです。ただギフトの難しさは、同じものを何度も贈れない、という点にあります。特に流行りモノであれば、リピートが起こりにくい。だから「ギフトとして定番化する」というところまではいかなかった。

安田

ああ、なるほど。じゃあギフトではなく自分で食べる用の商品として、スイーツやサンドイッチの販売を始めたのは理にかなっている気もします。


倉橋

そう思います。もともと技術力はあるはずですから、普段使いとしてしっかり焦点を合わせられれば、存続は可能じゃないかと。

安田

つまり、普段使いに活路を見出すと。ただそうなると、今度はあのパンの特徴が逆にネックになる気もします。あの特徴的な柔らかさが味わえるのは買ったその日だけですよね。かといって、1斤買ってその日のうちに食べきるのはちょっと大変ですし。


倉橋

それはそうですね。家族全員で食べたとしても、パンばかり食べるわけにいかないですから(笑)。賞味期限10秒のモンブランとまでは言わなくても、美味しいうちに食べてもらう工夫が必要だと思います。商品のサイズを小さくするというのもその一つの方法でしょう。

安田

確かになぁ。美味しいうちに食べようと思うと、1斤もらってもちょっと困る部分はありましたよね。残ったものを冷凍したり、トーストして食べたりしたら、他のパンと変わらないわけで。夕方に手土産でもらった日には、「今日の夕飯、どうしよう…」となりますよ(笑)。


倉橋

ですよね(笑)。その「使い方の難しさ」が、ブームが去った最大の要因かもしれません。結局、毎日食べるものではなかったんですよね。

安田

ただやっぱり、店側としては運営しやすかったんですよね。普通のパン屋さんって品数はめちゃくちゃ多いし、仕込みも重労働なわりにあまり儲からないと言われています。それが食パンしかなければ仕込みも現場のオペレーションも楽だし、人もそんなにいらない。

倉橋

そうですね。逆に言えば、これから街のパン屋さんの方向にシフトするのは難しいんですよね。「普段使いだけど、ちょっと特別なパン」という、新しい市場を創る必要があるというか。

安田

ははぁ、なるほど。つまり、「毎日食べるには高いけど、週末に自分のご褒美として買う」みたいな立ち位置ですか。

倉橋

ええ。例えばミスタードーナツのとある店舗の売上の7割はテイクアウトだそうですが、あれは「自分や家族へのお土産」という、絶妙なポジションを確立していますよね。

安田

確かに。あのようなマーケットを、もう一度、頭を使って創り出せるかどうかが、今後の鍵を握るわけですね。

倉橋

そうですね。あれだけの技術力を持った会社が、このまま消えてしまうのはもったいないですからね。僕も一人の経営者として、すごく注目しています。

 


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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