第115回 「美味しい」よりも大事な、商売の総合得点

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第115回 「美味しい」よりも大事な、商売の総合得点

安田

サイゼリヤの創業社長さんの言葉で、「美味しいものが売れるんじゃない。売れているものが美味しいんだ」というのがあるんですけど、ご存知ですか? 正直この意味がちょっとよく分からなくて。


倉橋

なるほど。これはつまり「お客様が支持したものが正解だ」ということですよね。僕はある意味共感できますね。

安田

そうですか。でも「美味しい」というのとはちょっと違うんじゃないかなって思っちゃうんです。どちらかといえば「安いから売れている」んじゃないかと。


倉橋

お客様って、いろんな要素の合計点が高いものを「買おう」となるんですね。味のクオリティが何点、価格が何点…というように、合計点が高いから選ばれている。そういう意味では味も値段も一要素に過ぎないですよね。

安田

それは私も理解できるんです。だから「売れるものが正しいんだ」なら分かるんですけど、「売れるものが美味しいんだ」と言われると、「そんなことないよな?」って思っちゃうんです。


倉橋

ああ、確かに。そこを突き詰めると、引っかかる部分はあるかもしれませんね。

安田

そうですよね。ちなみに「美味しいものが売れるわけじゃない」という部分に関しては、正しいと思いますか?


倉橋

それは思いますね。世の中には数えきれないくらいの商品があって、「すごく良い商品なのになんで売れないんだろう」というものもたくさんありますから。

安田

確かに。ただ食べ物に関しては、すごく美味しくて値段もそこそこだったら、来た人がリピートしたり評判になったりして、時間をかければ売れるようになる気がするんですけど。そんなことはないんですかね?


倉橋

うーん、食べ物も結局は総合点なんだと思いますよ。人間の脳ってすごく判断が早いんです。お店に入ってたぶん1秒もしないうちに、味以外の、居心地とか客層のようないろんなものを含めて採点しているはずです。

安田

ははぁ、なるほど。注文した商品が出てくる前に、ある程度の点数が決まっているわけですね。それに「すごく美味しい」といっても限界がありますもんね。「このハンバーグのためだけに通う!」というほどの店はなかなかないけど、「まずいから二度と行かない」店はある。


倉橋

ええ。美味しい店は、世の中にいっぱいありますからね。カレーなんて、そもそも美味しいじゃないですか。

安田

本当ですね。まずいカレーって食べたことないです(笑)。

倉橋

そうですよね。だから「美味しい」という土台の上で、人間のコンピュータがパッと採点して、75点以上ならリピートする、60点台ならもう行かない、みたいに決めている。それは全部、総合得点なんですよ。

安田

なるほど〜、納得です。飲食店のオーナーシェフにメッセージを送るとしたら、「美味しいものを作るな。お客様に評価される、売れるものを作れ」ということになりますよね。

倉橋

そういうことですね。どんなに美味しいものを作っても、お客様に支持されないものは評価されない。それがビジネスの世界なんだろうなと。厳しいですけどね。

安田

倉橋さんがリピートされているお店も、やっぱりそういう「売れるもの」を作っていると感じますか?

倉橋

そうですね。100%してると思います。美味しいんだけどリピートしない店っていうのは、やっぱり総合得点として、自分の基準を超えてこないんでしょうね。

安田

例えばディナーしかやっていないコース料理のお店って、シェフのこだわりが詰まった「好きな人が来てくれればいい」というスタンスの所が多い印象です。でも本当に流行っているお店は、そんな独りよがりでは作っていない、ということですか。

倉橋

それは絶対そうだと思います。メニュー構成から料理の量まで、ちゃんとターゲットに合わせて考えていると思いますよ。

安田

確かに「美味しいんだけど、量が多すぎて食べきれない」っていう理由で行かなくなることもありますもんね。

倉橋

そうそう。あとは時間がかかりすぎるとか。最近は会食も、6時にスタートしたら8時までには終わってほしいんですよ。

安田

ああ、よくわかります。私も2時間以内で終わってほしいです。

倉橋

でもたまに3時間半くらいかかる時もあるじゃないですか。そうなるとどんなに美味しくても、個人的な得点はちょっと下がっちゃいますね。もちろん3時間半ゆったりしたい、というお客様もいるでしょうし、そのお店はそういう人をターゲットにしているんだと思いますけど。

安田

そうですよね。そう考えると、同じコース料理でも全然違いますね。時間なんて今まであまりちゃんと考えたことなかったですけど、確かに行かない理由になりますね。

倉橋

そうなんです。美味しさだけじゃない。時間や量もお客様から選ばれるための重要な要素の一つとして考えられるかどうか。それが商売で大事な視点だと思います。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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