第117回 ジャングリアに見る「沖縄らしさ」と「品質」の境界線

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第117回 ジャングリアに見る「沖縄らしさ」と「品質」の境界線

安田

沖縄に新しくできた「ジャングリア」というテーマパークはご存知ですか?


倉橋

ええ、話には聞いています。まだ行ったことはないですけど。

安田

そのジャングリア、オープン当初からサービスの評判があまりよくないんですって。待ち時間が異常に長かったり、施設の作りがルーズな部分があったりするらしくて。


倉橋

ああ、ニュースで見ました。オープン前から言われてましたよね。

安田

そうなんです。でもですよ、沖縄には独特の「ウチナータイム」という文化があるじゃないですか。例えば夜7時に集まろうと言ってもその時間ぴったりに来る人はほとんどいない。7時半から8時ぐらいにようやく全員が揃うような感じなんですよ(笑)。


倉橋

ああ、はいはい(笑)。そういう土地柄なんですよね。ゆったりしているというか、そういう県民性や文化も含めて「沖縄らしさ」という感じもします。

安田

でしょう? だから沖縄好きな人って、そういうゆるさも魅力に感じていると思うんですよ。そう考えると、ジャングリアの少しルーズな部分も、ある意味「沖縄らしさ」という付加価値として、それ自体が売りになるんじゃないの? とも思ったんです。


倉橋

うーん、確かにそういう考え方もできるかもしれせんが、個人的には「ナシ」ですねぇ。サービスのルーズさや品質の低さを「らしさ」として売り物にするのは、同じサービス業をやっている立場からすると、ナンセンスかなぁと。

安田

もちろん常識的に考えれば仰るとおりなんですけどね。ただ先ほどの「ウチナータイム」のように、7時集合で7時半に来ても誰も怒らないのが文化なのだとすれば、待ち時間の長さも地元の人は全く気にしていない可能性はあるんじゃないかと。


倉橋

ジャングリアのメインターゲットが100%地元の方なら、確かに問題にならないのかもしれませんね。でも僕の印象だと、県外の人も多そうだし、むしろ美ら海水族館と同じように、観光客やインバウンド客がメインターゲットなんだと思っていて。

安田

ああ、なるほど。そもそも地元向けというよりは、観光客向けだと。確かに地元民だけであの規模の施設は成り立たないですもんね。


倉橋

ええ。そうなるとやっぱり、沖縄のローカルな基準ではなく、誰もが納得する高いサービスレベルが求められるんじゃないでしょうか。そもそもサービスを提供する上で、「このくらいのレベルでいいや」と上限を決めてしまうのは、あまりいいことだとは思えなくて。

安田

確かに。基本的な品質は担保した上で、沖縄らしさを出すべきだと。

倉橋

そう思います。実は僕も先日沖縄に行ってきたところで。現地で働く方々は、確かにおっとり、のんびりされている印象がありました。でも僕にとってそれは全然マイナスポイントじゃなかったんですよ。むしろ「ああ、沖縄っていいなぁ」と感じまして。

安田

わかります。せかせかしていない、あの空気感がいいんですよね。

倉橋

そうそう。でも例えば宿の部屋が清潔じゃなかったり、前の客のゴミが残っていたりしたら、それは明確にマイナスじゃないですか。

安田

ああ、なるほどわかってきました。「沖縄らしさ」と一言で言っても、「おっとり」と「ルーズ」は全然別の話だと。

倉橋

そういうことです。その線引きで考えると、アトラクションの待ち時間が長いのは、それだけ多くのお客様が来てくださっている証拠なので、ある意味で成功の証とも言える。でも施設のペンキの塗り方が雑だとか、作りがチープに見えるというのは、プロフェッショナルとして問題外じゃないかと。

安田

ははぁ、確かにその通りですね。待ち時間の話にしても、単にスタッフの手際が悪くて長くなっているのであれば、改善すべき点であると。

倉橋

そうそう。ジャングリアに関しては、まだターゲット設定が明確になっていないのかもしれませんね。そこがハッキリすれば打ち手もあれこれ見えてくるんじゃないでしょうか。

安田

なるほどなぁ。結局はそこに行き着くわけですね。いずれにせよ、地方のテーマパークで成功した事例はほとんどないわけで、頑張ってほしいですね。

 


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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