“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。
第138回 言葉ではなく「店づくり」でターゲットを絞る方法

先日、「富士そば」でちょっとした炎上騒動がありましたけど、ご存知ですか? ピーク時のサラリーマンを優先するために「外国人観光客はお断り」という趣旨の張り紙を出したらしいんです。

そうですよね。私も普段、倉橋さんから「ターゲットをブレさせちゃいけない」というお話を聞いているので、富士そばの戦略は正しいような気もしたんです。でも会社のやり方としてどうなんだろうと、ご意見を聞いてみたくて。

なるほど。お客様商売をやっている以上、いくらターゲットを明確にしたと言っても、それはあくまで会社の都合ですよね。「私たちのターゲットはこうです」と公にアナウンスするのは控えるべきだということでしょうか。

そうですね。ターゲット設定は相手に対して明確に訴えるべきものではなく、こちらが心の中で設定しておくべきものです。それを見た人が不快になるような張り紙をするのは、企業マナーの問題だと僕は思います。

でも現場の気持ちもわからなくもないんです。忙しい時期に観光客でいっぱいの富士そばだったら、常連さんは「休み時間に間に合わないから行くのをやめよう」となってしまう。観光客は一時的なものなので、常連さんが離れたらお店は困りますよね。

ええ。ターゲットに来てもらうために、その人たちが快適になるように何とかしなくちゃいけない。そこまでは全然OKですし、ターゲットを守ろうとする姿勢は素晴らしいと思いますよ。すごく徹底している証拠ですから。

ただ、「あなたたちはターゲットじゃないよ」ということを直接的に伝える張り紙は、戦略のアウトプットとしてはイマイチだということですね。ターゲット以外の人も含めて、不快にするようなことはやらない方がいいと。

客商売には心理的なイメージが必ずつくものです。「あそこは冷たい店だ」と不快に思う人がいる限り、企業としてはどうしてもマイナスになってしまう。ターゲットは決めても、それ以外の人を露骨に排除するようなアナウンスは避けるべきですね。

確かになぁ。一時期、コンビニで店員に土下座させるような悪質なお客さんが出てきて、「私たちは社員を大切にするので、こういうお客様はお客様と見なしません」という張り紙を出した会社がありましたよね。世間の反応はわりと好意的でしたけど、倉橋さんならやりますか?

なるほど。一対一で、その当事者に対して「うちはこういう考え方なんで」と伝えるのはOKだけど、不特定多数に向けた張り紙はすべきではないと。では今回の富士そばのように観光客を避けたい場合、張り紙をしないとしたらどういう手を打ちますか?

例えば万代さんに、外国人観光客がワーッと押し寄せて、いつ行ってもいっぱいで地元の日本人が遊べない状況になったとします。そしたら「これはまずいぞ」と思いますよね? でも「外国人お断り」とは書けない。

それは絶対にできませんね。相当叩かれるでしょうし、下手したら地元の日本人のお客様まで来なくなってしまうかもしれない。本当に難しい問題なので、どうやってイメージを保つかは社内でもしっかり議題にすべきテーマですね。

個人店ではよくあるらしいんです。常連さんだけで成り立っていた店が、SNSで噂になって新規客が一気に来て常連が入れなくなる。のんびりした空気感でやりたかったのに、と。でも今の時代、SNSの拡散を止めるのは不可能ですよね。

そうですね。そういう場合でも「来るな」とは言えませんから、一生懸命本来のターゲットに喜んでもらうことに努めるしかないと思います。例えば回転寿司って、1人だと入りづらい雰囲気を醸し出しているじゃないですか。
対談している二人
倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表
株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。


















