この対談について
“生粋の商売人”倉橋純一。全国18店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。
安田
今日は、最近よく海外に行かれている倉橋さんに「海外と日本の商売の違い」について伺えたらと思います。海外で買い物をする時って、当たり前のように値引き交渉するじゃないですか。でも日本にはそういう文化がないですよね。
倉橋
大阪のおばちゃんくらいですかね(笑)。そういう特定の地域以外は、そもそも最初からできる限り安く設定しますよね。
安田
そうそう、基本的に「正直」なんですよ。相場を知らない観光客だからと、高く吹っ掛けることもしない。でもそれって「商売人」としてどうなんだろう、という気もして。
倉橋
仰りたいことはよくわかります。例えば日本では値上げする時に「すみませんが……」とお詫びから入りますけど、それってすごくナンセンスだなと思っていて。
安田
同感です。別に値上げするのは企業の自由なのに、その理由が仕入れ価格の高騰のような仕方のないものだった時ですら、お詫びから入りますもんね。中には値上げを実行できず、売上が減って閉店してしまうお店すらある。
倉橋
そうそう。日本では「値上げ=悪いこと」というイメージなんですよね。でもそれって、実は最近の話で。高度成長期の頃は給料もどんどん上がっていたし、物の値段もちゃんと上がっていた。
安田
そうか、確かに。つまり「値上げ=悪い」というイメージがついたのはそう昔じゃない。
倉橋
ここ30年のことでしょうね。物価も上がらないけど、給料も上がらない。経済全体が停滞ムードになってしまっていた時期に、そういう感覚が定着してしまったんでしょう。
安田
そうですね。でも今はさすがに物価も上がり始めて……
倉橋
ええ。2022年頃から流れが変わって、物価がどんどん上がってきた。結果人件費も上がって、企業は商品の値段を上げざるを得なくなってきました。もはや「値上げ=悪」などと言っている場合じゃない。
安田
ええ。でもそこを上手にできない企業も多いですよね。もともと日本は「モノづくり大国」で、職人のレベルは高いと思うんです。でも「商売」が得意かというと、どうなんだろうと。
倉橋
最近海外によく行くので顕著に感じるんですが、熱量は明らかに低いですよね。東南アジアの人たちの商売の仕方を見ていると、命がけで挑んでいるような気概を感じます。
安田
確かに、商魂たくましい感じがしますよね。「売れるものを売って何が悪い!」という強さがあるというか。例えば日本だと転売する人、いわゆる転売ヤーをすごく叩く風潮がありますけど、海外には「転売がよくない」という概念もないでしょうし。
倉橋
そうですね。しかも、「倫理的にはよくないと分かっているけどお金のためにやっちゃう」んじゃなくて、そもそも「何が悪いかわからない」という感じなんでしょうね。ニーズの高い商品を頑張って手に入れて、利益を乗せて売ってるだけ。何がダメなの? と。
安田
それも商売といえば商売ですからね。日本人がそういうところに躊躇している間に、彼らはどんどんビジネスを拡大していくと。
倉橋
日本人は真面目なので、怠けることはあまりない。でも商売における本気度では引けを取っている感じはありますね。ここ最近、日本の大手企業の駐在員と話す機会も多かったんですが、なかなか決めきれない方が多いというか……
安田
ああ、なるほど。自分で責任を負いたくないんでしょうね。
倉橋
日本企業から東南アジアに駐在してる人って、だいたい任期が3年くらいなんです。それが終われば日本に帰ることが決まっている。だから任期中にわざわざリスクを取る必要がないんですよ。
安田
まぁ日本全体がそういう感じですもんね。大きく成功することより、失敗しないように、負けないように、と考えている。結果、じわじわと負け続けていることにはなかなか気付けない。
倉橋
そうですね。その点、他の国の人たちは、人生をかけて挑戦している感じがします。大手企業であってもそこは同じで、本当にスパッと決まる。
安田
権限も責任も仕組みとして現場に委ねられてるんでしょうね。成功したら収入が増える代わりに、失敗したらあっさり切られる。そういうリスクを背負っているからこそ、決断力も磨かれる。
倉橋
仰るとおりだと思います。成功させないと生きていけない。要するに片道切符で来ているんですよね。そりゃ本気になりますよ。
安田
なるほどなぁ。でも日本の場合、労働法があるから残業もさせられないし、厳しく教育したらパワハラだと訴えられる。
倉橋
そうなんですよ。𠮟咤激励では業績を伸ばせませんから。これからはチームで戦って勝っていくようなビジネスモデルを作って、なおかつ給料が上がる仕組みにすることが必要でしょうね。
安田
なるほど。まさに万代さんが目指すところというわけですね。
対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表
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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に18店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中
