第43回 販路を増やすことが先決な理由

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国18店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第43回 販路を増やすことが先決な理由

安田

少し前にXで「販路を増やすことが大事」だとポストされてましたよね。販路、つまり販売手法やプラットフォーム、あるいはお客さんの種類なんかを増やせば仕入れも増やせると。


倉橋

仰るとおりです。もっとも、それは僕らの業界だから言える話かもしれませんね。リユース業って、お客様からご要望をいただいてから商品を探すことが多いんです。言わば「販路が先に見つかっている状態」ということですね。

安田

ああ、なるほどなぁ。そういう意味で言えば、私が長く関わっているBtoBのビジネスは逆なんですよ。まず商品を作って、それから「買ってくれる人にどうアプローチするか」を考える。先に販路を見つけておいて、その後に仕入れる商品を増やしていく、という発想があまりないんです。


倉橋
そうでしょうね。ビジネスの感覚がけっこう違うのかも。
安田

でもそういうのとは別に、業界にかかわらず「ビジネスは絞り込まないと失敗する」という見方もありますよね。あれもこれもと手を広げすぎて失敗するケースも多々あるわけで。


倉橋
それでいうと私のニュアンスはちょっと違っていて、ごくごくシンプルに「お客様からいただく要望にはできるだけ応えていく」ということなんです。要望があったのなら、とにかく一度はやってみる。それを前向きに「販路拡大」と表現しているというか(笑)。
安田
ははぁ、なるほど(笑)。でも実際、そういうスタンスで万代さんは大成功を収めているわけですからね。

倉橋

ありがとうございます。皆さんのおかげです。

安田

でも倉橋さん、「お客さんの要望に応える」と一言で言っても、そう簡単じゃないと思うんですよ。全員の要望に応えられるわけでもないだろうし。そういう中でどうやってビジネスチャンスを見つけるんですか?


倉橋

そうですね…例えば万代では出張買取をやっているんですが、「貴金属を売りたい」というお客様がいたとしますよね。

安田
はい。宝石とかそういうものを売りたいと。

倉橋

そうそう。で、お宅に伺うんですが、宝石や貴金属をコレクションしてる人って、割と他の物も集めていたりするんですよ。お酒とか洋服とかバッグとか。

安田

ああ、確かにそうかもしれない。


倉橋
だから、それを見越してあらかじめ販路を作っておく。そういう感覚が大事なんじゃないかなと。
安田
なるほど! つまり仕入れのチャンスが巡ってきたときのために、先に販路を準備しておくわけですね。そうすれば「あ、ウチお酒の買い取りもやってるんですよ」と案内できるし、お客さんからしても一回でまとめて売却できて嬉しいと。

倉橋
まさに仰るとおりで、Win-Winなんです。だから僕らもできるだけいろいろな商品を取り扱えるように用意しておく。あるいは実店舗だけじゃなくECサイトを作ったりね。さらに海外へのルートがあれば海外向けの商材も扱えるようになりますし。
安田

なるほど、おもしろいです。確かにリアルでは売れないけどネットだったら売れる商品があったり、国内では売れないけど海外で売れたりすることもありますもんね。


倉橋
そうそう。そうやって掛け算的にアプローチを増やせるので、おのずとヒット率も高くなります。
安田

そうか。ただ単に幅が広がるだけでなく、その中でヒット商品を生み出す可能性も上がるわけですね。とはいえ実際にやろうとすると大変じゃないですか? 宝石の査定だけでも難しいのに、お酒や古着、さらにフィギュアの査定までやらないといけないわけでしょう。


倉橋
仰るとおりで(笑)。商品ごとに相応の知識や経験が必要になるので、1人では到底追いつきません。だから社内に一つずつ事業部を作ってそれぞれのスペシャリストを育成していくことにしたんです。
安田
ほう、なるほど。1人に任せるのではなく、会社としてそれぞれのプロがいると。

倉橋
そういうことです。お客様から要望をいただくたびに、その商材も査定できるようにと増やしてきました。「だいたい何でも買い取ります!」がモットーです(笑)。
安田

いや、やっぱりすごいですよ。普通「その商品は扱ってないので買い取れません」で終わりにするところ、むしろ商品に出会ったことを「ビジネスチャンス」だと捉える。それを機に販路を広げて、さらに大きな事業にしていくと。

倉橋
ありがとうございます。そういうスタンスを取ることで、実際に商機は増えますからね。例えば万代ではダイヤモンドと骨董品の両方を扱っているんですが、それぞれ専門性が高い分野なので、両方やっている会社は少ないんですね。
安田

ああ、そうでしょうね。全然ジャンルが違うというか。

倉橋
そうそう。でもね、実はこの2つって「お客様の年齢」という切り口で考えると非常に親和性が高いわけです。というのも、今の70代くらいの方たちって、1970~80年代に百貨店の外商からその両方を買っていた世代なんですよ。
安田

ははぁ、なるほど。その方たちが「そろそろ手放そうか…」と考え始めているタイミングだと。

倉橋
ええ。その時にあらかじめ販路を広げておくことで、「買い取れるものはできるだけ買い取ってほしい」というご要望に応えることができるわけです。結果、ウチのビジネスとしても利益アップに繋がる。
安田

いやぁ、さすがです(笑)。ちなみにどの範囲まで買い取るんですか? 万代さんって趣味の品もたくさん扱っていると思うんですけど、おもちゃから一眼レフカメラまでとなると、キリがないような……

倉橋
その判断基準になるのも、「販路があるかどうか」なんです。店舗で直接お客さんに販売しなくても、買ってくれる業者を知っていれば仕入れられますから。
安田

ああ、なるほどね。「いい一眼レフがあったら声かけてください」という業者さんとの付き合いがあれば、それも販路の一つになると。

倉橋
そういうことです。その業者さんにとっても、仕入先が増えるのは単純にメリットですしね。
安田

なるほど。それがリユース事業の仕組みなわけですね。おもしろいなぁ。

 


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に19店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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